花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎は、日本人の2人に1人が困っている病気です。2019年時点での日本人の有病率は49.2%もあり、発症の低年齢化もすすんでいます。
いまはアレルギー性鼻炎に対してさまざまな治療の選択肢があり、根本から治すことも期待できるのです。この記事ではアレルギー性鼻炎の症状や検査、治療方法について解説します。
アレルギー性鼻炎とはこんな病気
アレルギー性鼻炎とは、さまざまなアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因物質)に対して過剰な免疫反応が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状がでる病気です。
アレルギー性鼻炎には通年性と季節性があり、原因となるアレルゲンが違います。通年性アレルギー性鼻炎は、ハウスダストやダニなどに反応して、季節に関係なく1年中アレルギー症状がでます。
反対に季節性アレルギー性鼻炎は、いわゆる花粉症のことで、自分が反応する花粉の時期だけアレルギー症状がでる病気です。通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎の両方にかかっている方もいます。
アレルギー性鼻炎の主な症状
アレルギー性鼻炎の3大症状は「サラサラとした鼻水・連続するくしゃみ・鼻づまり」です。症状がでる原因は、アレルゲンと反応して鼻の中に炎症が起こるからです。
アレルギー性鼻炎の主な症状は以下の通りです。
- 透明でサラサラした鼻水
- 鼻づまり
- 連続するくしゃみ
- 目のかゆみ
- 皮膚の荒れ
- 鼻血
- 倦怠感
- 頭が重い感じ
症状が長引くと、鼻のかみすぎによる鼻出血の症状が出たり、頭がぼーっとして集中力が低下したり、倦怠感を感じたりする可能性があります。
鼻風邪とアレルギー性鼻炎の違い
鼻風邪とアレルギー性鼻炎は、鼻水の状態や鼻以外にあらわれる症状が違います。アレルギー性鼻炎ではさらさらした鼻水ですが、鼻風邪では粘り気があり色のついた鼻水がでることが多いです。
さらに鼻風邪では発熱や咳、痰、のどの痛みなど鼻や目以外の症状がでます。色のついたドロっとした鼻水や臭いが変だと感じる方は、アレルギー性鼻炎ではなく副鼻腔炎になっているかもしれません。
副鼻腔炎かもしれないと思った方は、副鼻腔炎についてまとめたこちらの記事も参考にしてください。
>>【最悪手術も】副鼻腔炎・蓄膿症の症状や治療方法・原因について解説
アレルギー性鼻炎の重症度チェック
アレルギー性鼻炎の重症度は「鼻アレルギー診療ガイドライン」で定められており、鼻づまりのひどさ、1日のくしゃみの回数や鼻水をかむ回数で3つの病型、5段階の重症度を判定しています。
くしゃみや鼻水が1日21回以上出てしまう方、1日中鼻がつまっている方は最重症と判断できます。
アレルギー性鼻炎の3つの病型
- 鼻漏型(鼻水やくしゃみが主な症状)
- 鼻閉型(鼻づまりが主な症状)
- 充全型(すべての症状が同じくらい)
アレルギー性鼻炎の重症度5段階
- 無症状
- 軽症
- 中等症
- 重症
- 最重症
アレルギー性鼻炎の治療方法はアレルゲンの除去
アレルギー性鼻炎の治療でもっとも大事なことは、原因となるアレルゲンとの接触を減らすことです。アレルゲンが体内に侵入することで症状が起こるので、接触頻度を少なくするだけでアレルギー性鼻炎の症状はやわらぎます。
生活環境を改善しても症状が出てしまう方や、重症度が高い方に対して、症状に合わせた治療を行います。
花粉が原因で発症している場合
花粉などが原因の季節性アレルギー性鼻炎の方は、マスクや保護メガネを活用したり、飛散量が多い日は外出を控えたりするなど、アレルゲンとの接触頻度を減らしましょう。
具体的な対策には以下の方法があります。
- 洗濯物は室内に干す
- ウールなど花粉を付着させやすい服はさける
- 家に入るまえに髪や衣類についた花粉をしっかり落とす
- 帰宅後はすぐにお風呂に入る
- 空気清浄機を活用する
- 湿度を50%程度に保つ
大切なことは、アレルゲンを家の中に持ち込まないように気をつけることです。
ダニやハウスダストが原因で発症している場合
ダニやハウスダストなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎の方は、掃除や洗濯をこまめに行い、アレルゲンが発生するのを防ぎましょう。
具体的な対策には以下の方法があります。
- 1畳あたり30秒程度かけてゆっくり掃除機がけを行う
- こまめに寝具を洗う
- 布製のソファーやカーペットは使用しない
- ダニが増えないよう湿度を50%程度に保つ
- 空気清浄機を活用する
- エアコン内部を掃除する
- 室内でペットを飼わない
定期的に押し入れやクローゼットも開けて、湿気がたまりやすいところの換気をすることも大切です。
鼻うがいで鼻の中を洗浄
鼻づまりを緩和し、鼻内部の清潔を保つ鼻うがいは、健康維持のための良い予防策となります。自宅では水と塩を使用して手軽に作成することができますが、誤った作り方をすると、鼻への刺激だけでなく、鼻粘膜へのダメージのリスクも増えます。
そのため、鼻うがい専用のキットや刺激が少ない生理食塩水の使用が推奨されています。これらのアイテムは、ドラッグストアやオンラインで手に入れることが可能です。
アレルゲン免疫療法で根本治療
アレルギー性鼻炎の根本治療にはアレルゲン免疫療法(減感作療法)があります。アレルゲン免疫療法とは、アレルゲンをごく少量から段階的に増やしながら投与することで、アレルギー反応を起こしにくくする治療です。
アレルゲン免疫療法には、注射で皮膚にアレルゲンを投与する皮下免疫療法と舌の裏にアレルゲンを入れる舌下免疫療法があります。スギ花粉とダニアレルギーに対して舌下免疫療法を行うことが可能です。
治療には3-5年かかりますが、多くの患者さんで改善効果が認められます。下記の記事に舌下免疫療法についての詳細な説明を記載していますので、根本解決したい場合はぜひ確認してみてください。
症状を抑えるために抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
根本治療ではなく、いま出ている苦しい症状を抑えたい場合に内服薬や点鼻薬を使います。内服薬には鼻水やくしゃみを改善してくれる抗ヒスタミン薬や鼻づまりを改善してくれるロイコトリエン拮抗薬などがあります。
鼻の炎症を抑えて、鼻づまりなどを改善するステロイドの点鼻薬も有効です。症状や重症度に合わせてこれらの薬を単独もしくは併用して使います。
鼻の粘膜を凝固するレーザー手術
レーザーで鼻の粘膜を焼いて凝固させることで、アレルギー性鼻炎の症状を改善させることが期待できる手術があります。
粘膜を焼くことで腫れが小さくなり鼻づまりが改善したり、粘膜が変性するためアレルギー反応が軽減したりします。入院する必要はなく、麻酔などの前処置を合わせても1時間程度で行える手術です。
アルゴンプラズマ凝固法
レーザー手術と同様に、鼻の粘膜を焼いて凝固させる手術にアルゴンプラズマ凝固法があります。この手術はアルゴンガスに高周波電流を流すことで広範囲を浅く焼くことが可能です。
レーザー手術より新しい治療法で、手術時間が短縮され、焼き過ぎによる副作用や術後の痛みも少ないです。当院ではこちらの方法で手術を行います。
アレルギー性鼻炎の検査方法・診断
発症時期(季節性・通年性)や症状(鼻水の状態など)、ご自身やご家族のアレルギー歴などを問診で確認します。
アトピー性皮膚炎の合併や気管支喘息などの既往歴も診察するための重要な内容ですので、診察時に必ずお伝えしてください。問診と合わせて、鼻鏡や内視鏡を用いて鼻の粘膜の状態を確認します。
診断の結果からアレルギー性鼻炎の疑いがある方には、アレルゲンを特定するために検査を行う場合もあります。検査方法は鼻や皮膚に直接アレルゲンを接触させてアレルギー反応を見る検査や、血液をとって調べる検査があります。
血液検査
血液検査では、血液中のアレルゲン特異的IgE抗体を測定します。IgE抗体の数値が高いほど、より強くアレルゲンに反応している(感作)ことになります。
5mlの血液で花粉やダニ、ハウスダストの他に動物の皮屑、卵や甲殻類など食べ物も含めた39項目について調べることが可能です。採血結果が出るまでには1週間ほど時間がかかります。
20分で結果がわかるイムノキャップラピッド
注射が苦手なお子さんや、1週間後に再診が難しい方にはイムノキャップラピットという検査もあります。イムノキャップラピッドは、指先に細い針を刺して少量の血液を採取して、20分待てばすぐに結果がわかります。
血液検査では39項目調べられますが、この方法では以下の8種類のアレルゲンについてのみ測定することができます。
- スギ
- カモガヤ
- ブタクサ
- ヨモギ
- ヤクヒョウダニ
- ゴキブリ
- イヌ皮屑
- ネコ皮屑
皮膚プリックテスト
皮膚に針を刺してアレルギー検査を行う方法がプリックテストです。検査方法は、皮膚の上に直接アレルゲン液を垂らし、プリックテスト専用の針でその部分の皮膚を軽く刺して20分ほど待ちます。
刺した部位の膨れ方や赤くなった範囲から、アレルギーの有無を判断します。乳幼児など血液検査が難しいお子さんにも行うことができる検査です。
鼻粘膜誘発テスト・試験
鼻の中に直接アレルゲンをつけて反応を確認する検査方法が鼻粘膜誘発テストです。アレルゲンがついた紙を鼻の粘膜に貼り付けたり噴霧したりして5分ほど待ち、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといったアレルギー症状があらわれるか確認します。
鼻に直接行う検査なので、血液検査と違い実際に症状が出るか判断することができます。
花粉症などアレルギー性鼻炎でお悩みなら病院へ
花粉症の薬はたくさん市販されていて、ドラックストアなどで購入して使えます。しかし市販されている点鼻薬の中には、使い続けると逆に鼻炎症状が悪化してしまう薬もあり注意が必要です。
安心して治療を行いたい方や根本治療を考えている方、アレルギー検査をしてアレルゲンを特定した方は、お近くの耳鼻咽喉科に相談してください。
記事を読んで不明点や個人的な質問があれば、江東区 東大島駅徒歩1分 よし耳鼻咽喉科までお気軽にご連絡ください。