高齢者に多い誤嚥性肺炎とはこんな病気
唾液や食べ物、胃液が気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。気管に異物が入った場合、通常はむせたり咳をすることにより気管から異物を追い出す反射が起きます。
誤嚥性肺炎とは、この反射機能が鈍ることで排出できなかった異物が肺の中に入ったままになり、肺に炎症を生じた病気です。病気で舌を動かす筋肉が衰えたり、嚙む力が弱くなったり、食べ物を飲み込む嚥下機能が低下したりしている方に起こりやすいです。
(唾液や食べ物、あるいは飲み物などを飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。)
嚥下障害については次の記事に詳しく書いているため、詳細を知りたい方はぜひご覧ください。
>>嚥下障害とはどんな病気?症状や原因・予防・治療方法を解説
主な症状
誤嚥性肺炎では、熱や咳など風邪と似た症状がみられるため、風邪と診断されてしまうこともあります。高齢者や嚥下機能が衰えている方に下記症状が見られた場合は誤嚥性肺炎を疑う必要があります。
<誤嚥性肺炎の主な症状>
- 高熱がでる
- 咳が多く出る
- 濃い痰(膿性痰)が多い
- 呼吸が苦しい
年配の方だと、これらの典型的な症状が現れにくいこともあります。肺炎とは一見関連がない印象をもつ症状が見られる場合でも、誤嚥性肺炎が進んでいる可能性があります。
下記の症状がみられる場合、医師に相談することをおすすめします。誤嚥性肺炎を初期に見つけることができるかもしれません。
<誤嚥性肺炎の可能性がある症状>
- 食欲がない
- 食事の時間が長くなる
- なんとなく普段より元気がない
- ぼんやりしていることが多い
- 失禁する
- 体重が徐々に減っている
誤嚥性肺炎になる原因
口の中の細菌が肺や気管支に入り炎症を起こすことが誤嚥性肺炎の主な原因です。誤嚥性肺炎がよく起こる高齢者や寝たきりの患者さん、嚥下機能が低下した患者さんは口腔ケアが十分ではなく、口の中の細菌が繁殖していることも大きな理由としてあげられます。
嚥下障害
嚥下とはものを飲み込む働きのことを指し、ものを飲み込む働きの障害のことを嚥下障害と呼びます。つまり、食べ物や飲み物、唾液をうまく飲み込めない状態です。一般的に、嚥下障害になると誤嚥性肺炎の発症率が高まるといわれています。
せき反射の働きの低下
健康な人は食べ物や飲み物、唾液などを飲み込んだ際、誤って気管に入ってしまってもせき反射が起きることで気管から異物を排出することができます。しかし、せき反射の働きが低下していると誤嚥したものがそのまま気管や肺にはいってしまい、誤嚥性肺炎につながります。
口の中が清潔に保たれていない
高齢者や寝たきりの患者さんは歯磨きをしっかり行うことができず、口腔内が清潔に保たれていないため、口の中の細菌が繁殖してしまいます。口腔内の細菌が睡眠中に唾液と一緒に気管支や肺に入ること、食べ物を誤嚥した際に食べ物と共に細菌が気道に入ることなどで肺炎を生じます。
体力や抵抗力の低下
健常な方であれば、細菌に対して免疫機能が働き、細菌をやっつけることが出来るため肺炎にはなりません。ただ、栄養状態が良くなく細菌への抵抗力が弱まっていたり、体力が低下している場合は誤嚥性肺炎につながる可能性があります。
誤嚥性肺炎の治療
抗菌薬を用いた薬物治療が中心となります。呼吸状態や全身状態が良くない場合は入院での治療となります。
薬物治療
誤嚥性肺炎の治療において中心的な役割を果たすのは抗菌薬です。通常の肺炎と異なり、口の中にいる常在菌や、嫌気性菌という細菌が悪さをしていることが多いので、これらに効果のある抗菌薬が選ばれます。
また、痰が詰まってうまく出せない場合は痰切りの薬が使われます。
酸素療法
呼吸が十分にできておらず、酸素が体に足りていないときには入院が必要となり酸素療法を行います。誤嚥性肺炎により肺がダメージを受けたり、もともと肺の病気がある場合には酸欠になりやすいです。
人工呼吸器
誤嚥性肺炎が重症化し、肺が上手く酸素を取り込めなくなった場合には酸素を吸入する治療を行います。しかし、酸素吸入しても体が酸素不足に陥っている際には人工呼吸器を使用し、呼吸の補助を行います。
誤嚥性肺炎の予防法
誤嚥性肺炎は日本における高齢者の死因の上位にある疾患です。また、1度誤嚥性肺炎を起こすと気道粘膜が傷つくことで誤嚥しても咳が起こりにくくなり、誤嚥性肺炎のリスクが上がる悪循環がおこることがあります。そのため、誤嚥をおこさないよう予防することが大切です。
口の中のケア
誤嚥性肺炎は誤嚥時に細菌が肺に入ることにより発生します。また、口の中は細菌が繁殖しやすい環境であるため、口腔ケアを怠るとすぐに細菌が増えてしまいます。歯磨きや入れ歯の手入れを入念に行い、口の中の細菌を繁殖させないことが誤嚥性肺炎の予防となります。
嚥下障害を改善する(のどの機能を改善する)
のどの機能の低下は誤嚥性肺炎を起こす原因の1つです。のどの機能が衰え、食べ物がうまく飲み込めない状態でいると誤嚥性肺炎を繰り返しやすいです。簡単な体操をすることで、のどの筋肉を刺激することができ、誤嚥性肺炎の予防にもなります。
胃や食道での逆流を防ぐ
胃液が逆流することで気道の粘膜が傷つき、誤嚥性肺炎となることがあります。食後2時間は横にならず、座っていることで胃液の逆流を防ぐことができます。
禁煙する
喫煙は気道の粘膜をきれいにする働きを抑制してしまうため、細菌がつきやすくなります。タバコを吸う方は、禁煙することをおすすめします。
調理を工夫する
ボロボロとして飲み込みにくい食品や飲み物には、片栗粉や市販されているとろみ調整剤でとろみをつけてみましょう。あんかけのようなトロトロしたとろみをつけ、飲み込みやすくすることで誤嚥を防ぐことができます。
姿勢に気を付ける
食事する際にはベッドではなく椅子に座り、前かがみの姿勢で食べることがおすすめです。介護される方がベッドでご飯を食べると上を向いていることが多いですが、上向きでは食事が飲み込みにくく、誤嚥のリスクが高まります。
ゆっくり食べる
誤嚥を防ぐためには、意識して少しずつゆっくり食べることも有用です。急いで食べると誤嚥のリスクが高まるためです。食べ物を口の中に入れすぎず、口の中にあるものを全部飲み込んでから次を口の中に運びましょう。
空飲み込み
食事中にむせたり、のどに食べ物が詰まっているように感じたりしたら、口の中に食べ物がない状態で「ごっくん」と唾液だけを飲み込む空飲み込みをしてください。気道の入り口に食べ物があった場合には食道に運ぶことができます。
嚥性肺炎を未然に防ごう
誤嚥性肺炎は日本における高齢者の死因の上位にある疾患です。また、1度誤嚥性肺炎を起こすとくりかえしやすいという特徴もあります。そのため、高齢者や嚥下機能が衰えている方は誤嚥性肺炎を起こさないよう予防することが大切です。
記事を読んで不明点や個人的な質問があれば、江東区 東大島駅徒歩1分 よし耳鼻咽喉科までお気軽にご連絡ください。