甲状腺腫瘍とはこんな病気
甲状腺腫瘍には良性と悪性があります。基本的に症状がないことが特徴で、腫瘍が大きくなるとしこりを見つけたり、首に違和感を感じたり、太くなったように感じる人もいます。しかし、しこりの90%が良性ですので心配しすぎる必要はありません。
甲状腺とは気管の前にある器官
甲状腺は首の真ん中、のどぼとけのすぐ下の気管の前にある重さ10~20g、大きさ4~5cm、厚さ1cmの小さな臓器です。正面から見ると蝶々が羽を広げたような形をしています。
この甲状腺では「甲状腺ホルモン」を造っています。「甲状腺ホルモン」とは新陳代謝を活性化させる作用があり、私たちが生きていくのに欠かせないホルモンです。
甲状腺にできる腫瘍・しこりの種類
甲状腺にできる腫瘍・しこりは全体的に腫れる「びまん性甲状腺腫」と部分的に腫れる「結節性甲状腺腫」の2種類あります。今回は後者の「結節性甲状腺腫」を紹介します。
【甲状腺癌】悪性の甲状腺腫瘍
甲状腺にできる腫瘍・しこりのうち悪性のものを甲状腺癌と呼びます。甲状腺癌のほとんどが進行が遅く、比較的おとなしい癌と言われています。女性に多い傾向があり、20~30代の方に見つかることも珍しくありません。
良性の甲状腺腫瘍
良性の甲状腺腫瘍は、濾胞腺腫と呼ばれます。基本的に転移の心配がなく、ゆっくりと成長していくため、治療は必要ありません。大きすぎる場合や医師が必要と判断した場合には手術をすすめる場合もあります。
【良性のしこり】腺種様甲状腺腫
甲状腺の細胞が刺激により増殖(過形成)してできたしこりが腺腫様甲状腺腫です。しこりは数個できることもあります。一般的には治療は必要なく、経過観察となります。腫瘍の大きさや医師が必要と判断した場合には、手術となるケースもあります。
【良性のしこり】甲状腺のう胞
甲状腺の中に液体がたまった袋状のものができ、これを「のう胞」と呼びます。「のう胞」は健康な方に見つかることが多く、良性です。数や大きさは頻繁に変わるといわれています。
甲状腺腫瘍の良性か悪性かの見分け方
甲状腺腫瘍が良性か悪性かを見分けるために、しこりを触ってみることが有用です。
一般的に良性腫瘍は触るとやわらかく、表面がつるっとしていて、動きます。一方、悪性腫瘍はかたく、表面がゴツゴツしていて、周囲とくっついているため、あまり動きません。
触るだけの判断は目安にすぎませんので、病院でさらに詳しい検査を受けることをおすすめします。
甲状腺腫瘍の症状
甲状腺腫瘍は良性である場合も、悪性である場合も大きくなるまで自覚症状はほとんどありません。甲状腺機能にも異常はないことが多く、早期に発見できなくても問題はないことが大半です。腫瘍が大きくなるとしこりや違和感を感じることがあります。
良性の甲状腺腫瘍の症状
基本的には無症状ですが、腫瘍が大きくなった場合には、しこりや違和感を感じることがあります。また、良性腫瘍から甲状腺ホルモンが過剰産生される場合には、動悸や発汗過多、体重減少などの甲状腺機能亢進の症状がでることもあります。甲状腺ホルモンを過剰産生する腫瘍である場合はプランマー病と呼びます。
甲状腺癌の初期症状
甲状腺癌でよくみられるのは、のどぼとけの下のしこりです。たまに呼吸が苦しい、声がかすれるなどの症状がみられることもあります。声がかすれるのは甲状腺癌が神経を障害することが原因です。
甲状腺腫瘍の治療方法
良性腫瘍であれば、基本的に治療は行わず、経過観察を行います。悪性腫瘍である場合には、原則手術を行いますが、腫瘍の種類などにより医師が対応方法を決定します。悪さをする可能性が低いと医師が判断した場合には悪性であっても経過観察となるケースもあります。
良性の甲状腺腫瘍で手術が必要な場合
良性の甲状腺腫瘍の場合、基本的に治療は行いません。しかし、腫瘍が大きく見た目が気になる、首に圧迫感がある場合には手術を行います。手術を行わない場合でも、定期的に通院し経過観察することは必要です。
悪性の甲状腺腫瘍は手術・放射線治療が必要
治療法は手術、放射線治療、薬物治療の3種類から選択し、実施します。多くの場合、手術を行いますが、悪性の甲状腺腫瘍の種類や進行度、患者さんの状態によって医師が決定します。手術後には補助療法として放射線治療を行うことも多いです。
甲状腺腫瘍の検査
甲状腺腫瘍は自覚症状がないことが特徴です。そのため、良性か悪性かを判断するために検査を行います。多くは診察による問診や視診・触診と超音波・エコー検査によって診断がつきます。
診察による問診や視診・触診
問診では体調の変化に気づいた時期、過去に放射線の被ばくがなかったかを確認します。視診や触診では、甲状腺の大きさ、しこりの有無・大きさ・硬さ・広がりなどを診ていきます。正常な甲状腺はやわらかく、触ることはできませんが、腫瘍ができるとしこりとして触ることが可能です。
血液検査
甲状腺の状態を調べるためにみるのは血液中のホルモンや腫瘍マーカーなどです。ホルモンとは甲状腺から分泌されるホルモン(甲状腺ホルモン)や甲状腺を活性化させるホルモン(甲状腺刺激ホルモン)などがあります。これらの値は手術後や経過観察となった際にも状態を見るために確認します。
画像検査
診察や血液検査だけでは良性か悪性かを判断することは難しいです。そのため、画像診断も活用しさらに詳しく検査をしていきます。
超音波・エコー検査
甲状腺腫瘍の良性か悪性かの判断において重要な検査です。超音波を当てて返ってくる音波から画像を作成します。甲状腺にあるしこりの大きさや形、位置などから悪性か良性かの判断に役立ちます。痛みはなく、10分程度で終わるため、患者さんの負担は少ないです。
CT・MRI検査
いずれも体の内部を画像で確認する検査です。CTはX線、MRIは磁力と電波によって画像を作成します。甲状腺腫瘍が良性か悪性かを判断することには有用ではありませんが、甲状腺癌の広がりや転移をしていないか確認することに有用です。
放射性ヨウ素を服用したアイソトープ検査
放射線を放出する放射性物質を服用していただきます。体の中の臓器や病気の部分に取り込まれた薬から放出される微量の放射線を専用の機器で測定し、画像を作成します。甲状腺では、甲状腺ホルモンを作り出すときにヨウ素を必要とするため、放射性ヨウ素を使用するのが一般的です。
病理検査(穿刺吸引細胞診)
しこりが、良性か悪性か詳しく調べるために行います。甲状腺に細い針を刺して細胞をとり、顕微鏡で確認します。超音波・エコー検査であきらかに良性と判断した場合は実施しないこともあります。
甲状腺にしこりを見つけたらすぐに病院へ
甲状腺にしこりを見つけた場合、大半は良性なので心配しすぎることはありません。しかし、悪性の可能性もあります。そのため、できるだけ早く病院を受診することをおすすめいたします。
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