首や耳の後ろに腫れや痛みなどの違和感を覚えたことはありませんか?
それはリンパ節腫脹をおこしているかもしれません。この記事ではリンパ節腫脹の特徴や主な症状、原因、治療方法について詳しく解説します。
リンパ節の腫れについて、よし耳鼻咽喉科院長の山中が動画でも解説しているので合わせてぜひご覧ください。
リンパ節腫脹(りんぱせつしゅちょう)とはどんな病気?
リンパ節腫脹とは、全身にあるリンパ節のどこか1つまたは複数箇所が腫れてしまう病気です。
リンパ節は感染症やがん細胞の拡大を防いでくれる免疫器官のひとつで、感染性物質の増加や膠原病、血液のがんなどを発症することで腫れや痛みなどの症状を起こします。
腫れが1㎝を超えるとリンパ節腫脹と考え、3㎝を超えると危険な病気の可能性が高まります。
若年層の場合は良性のことが多い
若い人のリンパ節腫脹は細菌やウイルス感染によって起こり、良性のリンパ節腫脹であることが多いです。
病気以外にもストレスや寝不足、喫煙習慣などが原因で免疫力が低下していると、リンパ節の腫れを感じる場合があります。
高齢者の場合はがんの場合もある
高齢者の方はがんの可能性もあるため注意が必要です。リンパ球という免疫細胞が腫瘍化して起こる場合や、他の部位のがんから転移してリンパ節腫脹をおこしている場合があります。
30歳以下のリンパ節腫脹は約80%が良性と言われていますが、50歳以上では約40%程度というデータもあります。
リンパ節の機能とは
リンパ節は免疫器官の1つです。身体の中に入り込んだ細菌やウイルス、がん細胞などの異物を回収して体内で増殖するのを防ぎます。
リンパ節は首や耳の後ろ、脇の下、足の付け根などに多く集中していて、フィルターのような働きをすることで免疫機能を発揮しています。
感染症などにかかるとリンパ節に細菌やウイルスが詰まってしまうため、リンパ節が腫れてしまうのです。
リンパ節腫脹の主な症状
リンパ節腫脹は、さまざまな病気の症状のひとつとしてあらわれます。リンパ節の腫れや痛みなどの自覚症状以外にも、発熱や発汗、倦怠感などの全身症状が出る方もいます。
自覚症状がある場合が多い
リンパ節は身体の表面にもあり、腫れや痛みなどの自覚症状を感じる方が多いです。触ると小豆サイズのしこりを感じることもあります。耳鼻咽喉科では、特に耳や首まわりの腫れや痛みを訴えて来院される方が多いです。
リンパ節の腫れ
ご自身でもリンパ節の腫れを感じることができます。ぐりぐりとして押したときに痛みがあったり、硬さを感じたりしたら炎症を起こしている可能性があります。
リンパ節の痛み
押したり触れたりしなくてもリンパ節の痛みを感じるときがあります。ただし、悪性リンパ腫の場合には痛みを伴わないことが多いので注意が必要です。
発熱や発汗などの症状が全身に出る場合もある
リンパ節腫脹は感染症や自己免疫疾患、悪性腫瘍などの全身性の病気が原因でもおこります。そのため発熱や発汗、体重減少などの症状が全身に出る場合があります。
症状は首やわきの下、足の付け根に出ることが多い
リンパ節は全身に300〜600箇所ありますが、特に首やわきの下、足の付け根に多く存在しています。そのためリンパ節腫脹もその部位に出ることが多いです。
リンパ節腫脹の原因
リンパ節腫脹の原因は多岐にわたります。ウイルスや細菌感染が原因でおこる場合や、悪性リンパ腫などのがんや自己免疫疾患など重大な病気の症状としてあらわれている可能性もあります。
感染性リンパ節腫脹
リンパ節腫脹は細菌やウイルス、梅毒などに感染することによって起こります。発熱や痛みを伴うリンパ節の腫れがあり、ときにリンパ節から膿が出ることもあるのです。
免疫力が低下している方は、結核に感染して結核性リンパ節腫脹になる可能性があります。
糖尿病や心臓病を患っている方、高齢者の方は感染しやすいため注意してください。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、リンパ系の組織に発生するがんです。リンパ節腫脹はおこりますが、多くの方で痛みが出ないのが特徴です。腫れは時間をかけて徐々に大きくなり、小さくなることはありません。
症状が進行するとリンパ節の腫れ以外にも発熱や倦怠感、体重減少やひどい寝汗などの全身症状が出る場合があります。
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫とは、骨髄に発生する血液がんの一種です。体内に侵入してきたウイルスや細菌から身体を守るために働く形質細胞ががん化して(骨髄腫細胞)、骨髄で異常増殖することで発症します。
背中や腰の痛みを訴えたり、骨折や貧血、腎機能障害などの症状が出たりする場合があります。
リンパ節腫脹の診断・検査方法
問診や触診などをおこないリンパ節の腫れの大きさや痛みをチェックします。
血液検査で炎症反応や抗体を調べることで、膠原病など全身性の疾患の可能性を確認します。CT検査をすることで、体の奥にあるリンパ節で腫脹を起こしていないか確認することが可能です。
骨髄に細い針を刺して検査(骨髄穿刺)したり、腫れているリンパ節に針を刺す検査(リンパ節針生検)をしたりして原因を特定します。
リンパ節腫脹の治療方法
リンパ節腫脹の治療方法は発症原因によって変わります。リンパ節の腫れを直接抑えるというより、原因となる病気を治療することでリンパ節腫脹を改善させます。
診断・検査によって原因を特定し、その原因に合わせた治療をおこなうことが大切です。
対症療法で経過観察が基本
ウイルスによる感染症が原因の場合は、重大な病気が隠れていないか検査した上で対症療法をおこない経過観察します。通常は1週間程度で良くなります。
抗生物質や抗結核薬を使う場合もある
検査で細菌感染や結核菌への感染が分かった場合は、抗生物質や抗結核薬を使用します。
細菌感染の場合は抗生物質を使用すれば1週間程度で良くなりますが、結核の治療に対しては複数の薬剤を半年以上服用しなければなりません。
がんの場合は抗がん剤治療
悪性リンパ腫などがんと診断された場合は、精密検査で進行度や他の臓器へ転移していないかどうかを詳しく調べます。
治療は抗がん剤による化学療法と放射線治療を中心におこないますが、進行が遅いがんの場合は経過観察で様子をみる場合もあります。
手術が必要な場合もある
リンパ液の流れが滞ってリンパ浮腫が出てくると、手術が必要になる場合があります。
リンパ管が詰まってしまうのが原因なので、リンパ管と静脈をつなぐバイパスを作りリンパの流れを解消させます。手術は局所麻酔でおこない、1週間程度の入院が必要です。
リンパ節腫脹を予防するには免疫を高めることが重要
ウイルス感染や細菌感染が原因のリンパ節腫脹は、免疫力を高めることで予防できます。暴飲暴食や寝不足、ストレスの多い生活に注意して、適度な運動を心がけましょう。
ただし多発性骨髄腫や悪性リンパ腫は、原因が分かっていない所もあるため予防が難しいです。早期発見が重要になりますので、日頃から体調変化を意識するとともに、リンパ節に腫れがないかセルフチェックをおこなってください。
リンパ節腫脹とリンパ浮腫の違い
リンパ節腫脹とリンパ浮腫の2つは似たような言葉ですが、原因や症状が違います。
リンパ節腫脹はリンパ節が大きく腫れてしまう病気ですが、リンパ浮腫はリンパ液の流れが悪くなりリンパ液が身体にたまる病気です。
リンパ浮腫の症状は手足の張りやむくみ、重だるさを感じる方が多いです。
リンパ腫脹は感染症やがんの発症などの原因で起こりますが、リンパ浮腫はがんの治療でリンパ節を切除した結果おこる場合や、生まれつきリンパの流れが悪くておこる場合があります。
小児の場合は複数の病気の可能性がある
小児の場合、元気な子供でも首や後頭部に小豆大のリンパ節の腫れを感じることがあります。ほとんどの場合は正常なリンパ節の腫れのため、特に治療は必要ありません。
しかし、川崎病などの重大な病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。リンパ節の腫れや痛みとともに、発熱などの症状がある場合は早めにご相談ください。
川崎病
川崎病とは全身の血管に炎症が起こる病気で、4歳以下の乳幼児に多くみられます。心臓に関係する血管に炎症が起こった場合、命に関わるため早期発見・早期治療が重要です。
以下の主要な6つの症状のうち、5つ以上該当すると川崎病と診断されます。その主要症状のひとつにリンパ節腫脹が入っています。
- 高熱
- 両目の眼球結膜充血
- 真っ赤な唇・いちごのようなブツブツの舌
- BCG接種部位の発赤
- 手足の腫れ、発疹
- 頚部リンパ節腫脹
EBウイルス感染症
EBウイルスとはヘルペスウイルスに感染しておこる病気です。乳幼児の80%近くは症状がほとんど出ず、知らないうちに感染している場合もあります。
症状としては高熱や喉の痛み、首のリンパ節腫脹などありますが、特効薬はなくメインの治療は解熱鎮痛剤などによる対症療法です。
EBウイルスは大人の体内にも潜伏しており、特に唾液中に多くあるため、食器の使いまわしや子供へのキスなどによる飛沫感染・接触感染が原因でうつります。
壊死性リンパ節炎
壊死性リンパ節炎とは、原因不明の高熱と首のリンパ節腫脹がおこる病気です。高熱が数週間以上続くこともありますが、1ヶ月〜3ヶ月程度で良くなる良性の疾患です。
抗菌薬は効かず、解熱鎮痛剤などを用いた対症療法がメインの治療となります。
20代〜30代の女性に多くみられますが、小児も含めた幅広い年代の方に発症する可能性があります。
アデノウイルス感染症
アデノウイルスは扁桃腺やリンパ節で増殖し、気管支炎や咽頭結膜熱(プール熱)などの病気をおこします。高熱や喉の腫れ、首のリンパ節が腫れて痛みが出ることがあります。
特別な治療方法はなく、症状を抑えるための対症療法が基本です。
感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染で広がります。家庭内での感染も多いですので、タオルや食器などは共有せず、手洗いやうがいをこまめにおこなってください。
リンパ節腫脹と関連のある病気
リンパ節は免疫器官のひとつなので、細菌感染や炎症性の疾患にかかるとリンパ節腫脹をおこす可能性があります。特にリンパ節腫脹と関係のある病気をいくつかご紹介します。
サルコイドーシス
サルコイドーシスとは、体内のさまざまな組織に小さな腫れもの(顆粒腫)が形成される炎症性の病気です。顆粒種が発生する部位によって異なりますが、リンパ節の腫れや発熱、呼吸困難、発疹などの症状があります。
原因は不明で自然に治癒する方もいれば、治療をしてもなかなか改善しない事例もあります。胸のレントゲンなどで偶然発見される場合が多いため、健康診断などで定期的に検査することが大切です。
関節リウマチ
関節リウマチとは自己免疫疾患のひとつで、関節が炎症をおこして痛みや腫れの症状を伴い、放置していると関節が変形してしまう病気です。
特徴的な症状としては朝のこわばりと左右対称の関節炎があります。炎症がひどい活動期では微熱やだるさ、リンパ節の腫れなど関節以外の症状が出ることもあります。
30代〜50代の女性に多い病気で、早期に発見・治療して関節の変形を防ぐことが重要です。
皮膚筋炎
皮膚筋炎とは関節リウマチ同様自己免疫疾患のひとつで、筋肉や皮膚、肺など全身に炎症がおこる病気です。
顔などに赤い皮疹ができたり、腕や足の筋力が低下したりします。全身の症状として倦怠感や発熱、リンパの腫れがあらわれる場合があります。
腕が上げづらかったり、階段を上るのがつらかったりする場合は、年齢による体力不足ではなく、皮膚筋炎の可能性もありますので注意してください。
リンパ節の腫れを自覚している場合は早めに耳鼻咽喉科へ
リンパ節の腫れはさまざまな病気の症状としておこります。自然に治癒する場合もありますが、重大な病気が隠れているかもしれません。
日頃からリンパ節が腫れていないかご自身でチェックしていただき、リンパ節の腫れを感じた場合は早めに耳鼻咽喉科へご相談ください。