新型コロナウイルス感染症にかかった後、咳が治まらずにつらい思いをしている方も多いのではないでしょうか。ウイルス感染は治っても、後遺症で咳が出るとまわりの目が気になって外出しづらいですよね。
この記事では、コロナ後遺症とは何か、後遺症の中でも咳や呼吸器の症状について特徴や原因、対処法を詳しく解説します。
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コロナ後遺症の咳ならではの特徴
コロナ後遺症とは新型コロナウイルス感染後も長く残る症状をいいます。ここでは、コロナ後遺症の定義と主な症状、コロナ後遺症の咳の特徴についてまとめました。
「コロナ後遺症」とは新型コロナウイルス感染症の罹患後症状
WHO(世界保健機構)では、次のようにコロナ後遺症を定義しています。
「新型コロナウイルス(COVID-19)に罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、ほかの疾患による症状として説明がつかないもので、通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にもみられる」
つまり、以下の条件を満たす症状が「コロナ後遺症」といえます。
- 新型コロナウイルス感染症にかかった後に発現した症状
- 発症から3カ月経っても残る症状
- 2カ月以上症状が続いている
「コロナ後遺症」は咳以外にも症状がある
コロナ後遺症は咳以外にもさまざまな症状が全身に現れます。現在、以下のような症状が報告されています。
- 疲労感・倦怠感
- 関節痛
- 咳・痰・息切れ
- 頭痛
- 嗅覚・味覚障害
- 睡眠障害
- 抑うつ
一般的なかぜ症状だけでなく、精神面に影響が出るなど生活の質に大きくかかわる症状があります。
コロナ後遺症の咳は長引く
コロナ後遺症の咳は時間とともに治る方が多いですが、6カ月、12カ月と咳症状が続くケースもあります。後遺症の症状は、感染時の症状が重かった人ほど長引く傾向があるようです。2020年9月〜2021年5月に行った調査では、3カ月後に咳症状がある割合は中等症患者では11.1%に対し、重症患者では34.1%だったとわかっています。
【原因】コロナ後遺症の咳は喉や粘膜の問題で発症する
コロナ後遺症による咳の原因は主に次の二つです。ひとつめは新型コロナウイルス感染症によって口の粘膜が薄くなることが原因です。粘膜が薄くなると乾燥しやすくなり、その結果、咳が出ると考えられます。
もうひとつは唾液が出にくくなることです。新型コロナウイルス感染症の後も唾液が出にくい状況が続く場合、喉が乾燥して炎症が起きるため咳が出るのです。
コロナ罹患後は別の疾患を引き起こしている場合もある
コロナ後遺症の咳だと思っていても、別の疾患にかかっていることもあるため注意が必要です。咳が続く症状として、以下のような疾患の可能性があります。
- ウイルス性肺炎
- 気管支喘息・咳喘息
- 気管支炎
それぞれの疾患について解説しますので、当てはまる症状がありましたら専門医を受診してください。
ウイルス性肺炎
新型コロナウイルス感染症が治った後、後遺症ではなく以下のような別のウイルス感染を起こすことがあります。
- インフルエンザウイルス
- RSウイルス
- アデノウイルス
- ヒトメタニューモウイルス
咳だけでなく発熱や筋肉痛などがある場合は、ウイルス感染の可能性もあるため医師に診断してもらうことをおすすめします。
気管支喘息・咳喘息
新型コロナウイルス感染症がきっかけで喘息症状が悪化した例もあります。喘息はかぜやインフルエンザなどでも悪化・再発することがあり、肺機能検査・呼気一酸化窒素検査などをして喘息状態の確認が必要です。
一方で、過去に小児喘息・気管支喘息と診断されたことがない方が、新型コロナウイルス感染症がきっかけで喘息を発症したと考えられるケースもあります。以下のような喘息に特徴的な症状がある場合は、専門医の診察を受けましょう。
- ゼイゼイ、ヒューヒューする
- 朝方や夜に悪化する
- 冷気や煙にあたると咳が出る
気管支炎
新型コロナウイルス感染症がきっかけで、気管支炎が悪化した例もあります。慢性気管支炎を発症する方の多くは、喫煙者や過去に喫煙していた人です。
新型コロナウイルス感染をきっかけに気管支炎が悪化したり、今まで診断されていない方に発症したりする場合もあります。検査で肺機能の低下がみられる場合が多く、ひどくなると運動時に息切れすることがあります。
コロナ後遺症の咳への対処法
ここからはコロナ後遺症の咳に対する対処法を詳しく説明し、症状が長引く場合など医療機関を受診する目安をお伝えします。
コロナ後遺症の咳には以下の対処法がおすすめです。
- 痰を出す
- 加湿する
- マスクをつける
日々の生活を少し工夫するだけでも効果がありますので、ぜひ取り入れてみてください。
痰は出すようにする
健康な状態でも、1日約100mlの痰が出ています。気道にウイルスや花粉などの異物が入ってくると、異物を出そうとして粘り気のある痰に変わり量も増えるのです。
痰を出すことで気道が掃除され、喉の不快感がやわらぎますが、反対に痰がうまく出ないと、息苦しくなったり咳が続いたりしてしまいます。気管支が痰でいっぱいになって肺に空気が届かず、肺がつぶれてしまうこともあるのです。
こまめに水分をとり、痰を出しやすくする薬を使うなどして、なるべく痰が溜まらない状況をつくりましょう。
加湿することで乾燥を防ぐ
加湿により、気道の乾燥を防ぐことで多すぎる痰を減らすことができます。痰の役割には気道の掃除だけでなく、加湿して気道を守る役割もあるからです。
加湿器を使用したり、シャワーを浴びた後に浴室のドアを開けっぱなしにしたりすることで手軽に部屋の湿度を上げられます。
湿度が高いと気道の粘膜が荒れにくいだけでなく、空気中のハウスダストやウイルスが舞い上がりにくくなるため、気道への刺激も減らせます。
マスクを着用する
マスクには、他者への感染を防ぐ以外にも気道を守る効果があります。マスクをすることで外出時の冷気や乾燥から気道を守り、咳をやわらげることができます。
ただし、マスクをしていると喉の渇きを感じにくくなるため、乾燥を防ぐためにも意識して水分をとるようにしてください。
長引く場合は医療機関を受診する
咳や痰は異物を体の外に出すための仕組みであり、必ずしも悪いものではありません。
しかし、以下のような場合は医療機関を受診することをおすすめします。
- 咳で睡眠がとりづらい
- 日常生活に不都合がある
- 息苦しさを感じる
- 痰がきれずに咳が続く
このような状態が続くときは、痰の吸入や抗生剤が必要な場合もあります。適切な診断のもと治療を受けることが重要です。
コロナ後遺症の咳を治療する方法
加湿をして水分をとっても痰がきれない、咳が長引くという場合は、薬で咳を抑えた方がいいこともあります。
咳が出ることで、日常生活にどのような影響があるのか、何に困っているのかによっても治療の緊急度は変わります。困っていることがあるなら、まずは専門家である医師に相談してみましょう。
コロナ後遺症の咳の診察・検査方法
コロナ後遺症の咳の診察では問診や検査が大切です。同じような咳でも、病歴やこれまでの経緯、炎症の状態などによって必要な薬は異なります。
以下のような問診や検査をします。
- 問診
- コロナに感染したのはいつか
- 咳が出始めたのはいつか
- 最初の症状は何か
- ほかの症状はあるか
- 病歴・アレルギー歴はあるか
- 検査
- 呼吸機能検査
- 画像検査(肺のCT)
- 呼気一酸化窒素の測定
- 血液検査
これらの問診や検査から総合的に判断し、個々に合わせた薬で治療します。
咳の症状が長引く場合は早めに医療機関を受診しよう
コロナ後遺症で咳が続くと、睡眠がとりづらくなったり日常生活で息苦しくなったりとつらい症状が続きます。コロナ後遺症ではなく違う疾患で咳が続くこともあるため、注意が必要です。加湿やマスクなどの対策をしても咳や痰が続く場合は、医療機関を受診しましょう。
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