アレルギー症状の原因について専門医が解説!ストレスとの関係や検査方法が分かるように

日本人のほぼ半数と言える43%が発症している花粉症は、国民的なアレルギー疾患です。花粉症の症状はくしゃみ・鼻水・頭痛・痒みなど個人差がありますが、アレルギーの発症や悪化にストレスが関連していることはご存じでしょうか。

この記事では、アレルギー症状の原因とストレスの関係について解説しつつ、病院で受けられるアレルギーの検査方法についても紹介します。

目次

アレルギーを発症する主な原因は「免疫反応」

人間の体には健康な状態を保つための「免疫」という仕組みが 備わっています。体内に入った細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などの異物を認識して攻撃・排除しようとする仕組みで、この反応が「免疫反応」です

免疫反応の中でも、異物に対して反応するとき、自分自身の体を傷つけるような症状を伴う過剰な免疫反応をアレルギー反応と言います。アレルギー症状はくしゃみや蕁麻疹をはじめ、重度になると呼吸困難やアナフィラキシーショックなどの強い症状を引き起こす可能性があります。

ストレスもアレルギーの原因になる

アレルギー発症の原因は花粉などの自然環境によるもの、大気汚染や住宅構造の変化などの生活環境の変化に加え、近年では精神的ストレスの増加も要因になると指摘されています。

代表的なアレルギー疾患である喘息(ぜんそく)は、ライフイベントや日常生活のストレスをきっかけに発病、あるいは喘息発作を誘発・悪化させると知られています。

ストレスは人間の免疫機能に悪影響をおよぼすため、ストレスもアレルギーの原因のひとつとして考えられているのです。

アレルギー症状が出るまでの仕組み

アレルギー症状とは、「感作(かんさ)」状態の細胞が「アレルゲン(抗原)」に反応して表れる症状です

人間の皮膚や粘膜には、外から異物が入らないようにするバリア機能があります。食品や花粉、ハウスダストなど身の回りに存在する物質の多くが、アレルゲンになる可能性を持っています。バリア機能が何らかの原因で崩れると、ウイルスや細菌、アレルゲンが体内に侵入するのです。

体内に侵入したアレルゲンが、抗原提示細胞に異物と認識されると、IgE抗体という物質を生産します。IgE抗体は血管を流れ、皮膚や粘膜にいるマスト細胞に付着します。この状態が「感作(かんさ)」です。

細胞が感作状態になっているだけでは、アレルギー症状は出ません。再びアレルゲンが体内に侵入し、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで、痒みやくしゃみなどのアレルギー症状を引き起こします

小児期は「アレルギーマーチ」にも注意が必要

「アレルギーマーチ」とは、アレルギーになりやすい子どもが成長するにつれ、いろいろなアレルギー疾患に順番にかかっていく様子をたとえた言葉です。

乳児期に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などを発症した子どもが、もっと大きくなると喘息やアレルギー性鼻炎を発症することはよくあるパターンです。

子どものアレルギー発症には「子ども自身の要因」と「環境要因」の2つが影響すると考えられています。

「子ども自身の要因」とは、成長による免疫系や臓器の発達を指します。発達に応じて影響を受けるアレルゲンが変化するためです。

「環境要因」とは、外部からの影響全般を意味します。成長とともに子どもの行動範囲は広がり、食事内容も変化し、接触するアレルゲンも増えるためです。

近年小児のアレルギー疾患が増加する中で、この「アレルギーマーチ」の発症、進展を予防するための早期診断、早期介入の研究が進められています。

具体的なアレルギーの原因物質

アレルギーは原因物質であるアレルゲンの侵入経路別に、以下の3つに分けられます

  • 吸入性アレルギー
  • 食物性アレルギー
  • 接触性アレルギー

それぞれの侵入経路でどんな物質がアレルギーの原因となっているのか詳しく見ていきます。

吸入性アレルギーの原因物質

吸入性アレルギーはさらに3つに分類され、具体的なアレルゲンは以下の通りです。

  • 室内:ほこり、ダニ、ペットの毛、建物に使用される化学物質など
  • 花粉:ブタクサ、スギ、ススキなど
  • カビ:カンジダ、アスペルギルス、ペニシリウムなど

花粉は季節性アレルゲンとも呼ばれ、植物の開花期にアレルギー症状が出ます。季節に関係なく症状が出るハウスダスト、ダニ、カビは、通年性アレルゲンです。

吸入性アレルギーの対処法は「アレルゲンを吸い込まない」ことです。室内の清掃や換気、外出時にはマスクや眼鏡を装着し、アレルゲンの吸入を避けましょう。

食物性アレルギーの原因物質

食物アレルギーの原因物質は、食物に含まれる特定のタンパク質です。食物アレルギーでは、本来なら体に害を与えない食べ物に含まれるタンパク質を身体がアレルゲンと認識し、アレルギー症状を引き起こします。

加工食品で表示が義務づけられている、または推奨されているアレルギー物質は以下の通りです。

特定原材料8品目(表示義務あり)

  • 小麦
  • えび
  • かに
  • 落花生(ピーナッツ)
  • そば
  • くるみ

【特定原材料に準ずるもの20品目(表示が推奨されている)】

  • アーモンド
  • あわび
  • いか
  • いくら
  • オレンジ
  • カシューナッツ
  • キウ イフルーツ
  • 牛肉
  • ごま
  • さけ
  • さば
  • 大豆
  • 鶏肉
  • バナナ
  • 豚肉
  • まつたけ
  • もも
  • やまいも
  • りんご
  • ゼラチン

参考:加工食品の食物アレルギー表記ハンドブック-消費者庁

日本では食物アレルギーの原因として、鶏卵、牛乳、小麦が全体の70%を占め、特に鶏卵は40%近くを占めます

接触性アレルギーの原因物質

接触性アレルギーは、皮膚に触れるもの全てに原因となる可能性があります。特に接触性アレルギーの原因となりやすい物質は以下の通りです。

  • 金属:ニッケル、コバルト、クロム酸塩、水銀、金
  • 靴や衣類の製造に使用される化学物質:靴のなめし剤、衣類のゴムに含まれる加硫促進剤や酸化防止剤、染料
  • 化粧品:頭髪用染料、マニキュア、マニキュア除光液、デオドラント剤、保湿剤、アフターシェーブローション、香水、日焼け止め
  • 成分に薬が含まれている皮膚用製品:抗菌薬(バシトラシン、スルホンアミド系、フラジオマイシン)、抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン)、痛み止め(ベンゾカイン)
  • 植物: ツタウルシ、ポイズンオーク、ポイズンスマック
  • ゴム(ラテックスを含む)
  • 香料:洗面用品、石けん、香料入りの家庭用品(洗浄剤など)に含まれるもの

接触性アレルギーでは、原因物質を含む製品を問題なく長期間使用していた後に、突然アレルギー反応が生じることもあります。

アレルギーの原因はアレルギー検査でわかる

アレルギーの原因は血液検査で調べられます。検査には3種類あり、調べられるアレルゲンの種類と数の違いによって使い分けられます。

  • MAST36

アレルギーの原因物質36項目を測定します。

アレルギー症状の原因となりやすい食物アレルゲン20項目、花粉アレルゲン8項目、環境アレルゲン4項目、その他のアレルゲン4項目が対象です。

  • MAST48mix

MAST36に、木の実やカビ、ブタクサ、イネ科、ダニ、犬・猫などペットのアレルゲン6項目(18種類)が追加された検査です。MAST36の検査に含まれないアレルゲンが疑われる場合、MAST48mixで検査します。

  • VIEW39

昆虫(ガやゴキブリ)、サバやリンゴ、ヤケヒョウダニ、マセラチアに対するアレルゲンなど、MAST36の測定項目に無いアレルゲンの検査が可能です

検査によって発覚したアレルギーの種類によっては、治療も可能です。花粉やハウスダストによるアレルギー性鼻炎の治療について、詳しく知りたい方はこちらもご参照ください。

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アレルギー体質は親から子へ遺伝する場合もある

アレルギー体質は遺伝するといわれているため、アレルギーのある親から生まれた子どもはアレルギー疾患になりやすいという報告があります。ただし、親が花粉症だからと言って、その子どもが全員花粉症を発症するとは限らないように、「アレルギー体質の遺伝」とアレルギーによって起こる「疾患の遺伝」は、必ずしも一致しません。

アレルギーは、アレルゲンや精神的なストレスなどの環境要因と、遺伝要因が複雑に絡み合って発症します。遺伝はアレルギー発症のリスク因子の一つですが、アレルギー体質の遺伝だけでアレルギーを発症するとは言えません

アレルギー症状が出た場合は医療機関を受診しよう

アレルギー発症のタイミングは突然です。今まで何ともなかった食べ物や使っている化粧品に対して急にアレルギー症状が出る場合もあります。アレルギー症状には蕁麻疹(じんましん)やくしゃみなどの軽度の症状から、呼吸症状やアナフィラキシーなど、命にかかわる症状もありますアレルギー症状かもしれないと思ったら、迷わず医療機関を受診しましょう。

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この記事の監修者

山中 弘明のアバター 山中 弘明 よし耳鼻咽喉科 院長

【経歴】
・東京医科大学医学部 卒業
・東京医科大学八王子医療センター 初期研修修了
・日本大学板橋病院 勤務
・日本大学病院 勤務
・都立広尾病院 勤務
・よし耳鼻咽喉科 承継

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・身体障害者福祉法 第15条 指定医
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医

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