耳鳴りの原因はさまざまですが、放置してしまうと症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。症状を緩和させるためには医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。治療方法のなかには補聴器を使用する場合もあります。
今回の記事では、耳鳴り治療の1つである音響療法の特徴や家庭でできる実践方法についてわかりやすく解説します。
補聴器を使った耳鳴りの治療法「音響療法」とは
音響療法とは、耳鳴りがあっても気にならないようにすることを目的とした順応療法(TRT)の1つであり、補聴器が使用される場合があります。そのほかにも、CDなどを用いた環境音楽やサウンドジェネレーター(*)を使用する場合もあります。
補聴器は難聴が重度の場合に使用が可能です。難聴ではなかったり、耳鳴りが軽度だったりした場合は環境音楽やサウンドジェネレーターを使用することもあります。
音響療法で補聴器を使用することもありますが、耳鳴りの程度や難聴の有無によって使用する手段は違います。
*サウンドジェネレーター・・・人工的な音を流すことで耳鳴りを軽減させる補聴器型の音声派生装置
そもそも耳鳴りが起こる仕組みとは
耳鳴りとは、まわりに音がないにもかかわらず、耳や頭のなかに音を感じる状態です。耳鳴りが生じる原因は現時点では明らかになっていませんが、音に対する脳の異常な反応が原因と考えられています。
通常、音は振動を経て電気信号となり、脳に伝わることで音として認識されますが、難聴の種類によっては電気信号に変える機能が弱くなります。その結果、音の聞こえにくさを補うために脳が過剰に反応し、電気信号を増幅することによって耳鳴りが生じてしまうという説が有力です。
「音響療法」は難聴の場合にも適用される治療法
音響療法は難聴にも適用される治療法であり、海外のガイドラインでも推奨されています。難聴に対する音響療法は神経のはたらきすぎを抑える効果があります。補聴器を使用することで聞こえがよくなり、ストレスや疲労感の軽減にも効果的です。
耳鳴りに対する音響療法の目的は静寂を避けることです。負担のかからない音を取り入れることによって耳鳴りへのストレスや緊張を和らげたり、耳鳴りへの注意をそらしたりする効果が期待できます。
音響療法では、補聴器のほかにもサウンドジェネレーターを使う場合もあります。サウンドジェネレーターを使用する場合は1日6時間以上の装着が必要です。難聴がなく耳鳴りが軽度の場合に適しており、なかでも静かなときや睡眠中での使用が効果的です。
音響療法は家庭でも実践できる
音響療法は家庭でも実践が可能です。まったく音がない環境よりも、音量を調整した音を日常に取り入れることで、耳鳴りを感じにくくする効果が期待できます。
家庭で音響療法を実践する際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 音量が一定のものにする
- 音源はやや遠目に置く
- リラックスできる音にする
ラジオやCDなど、音量を一定に調整できるものを使用してください。耳鳴りをすべて音で隠してしまうと、音をなくした際にかえって耳鳴りが強くなる可能性があります。耳鳴りがかすかに聞こえる程度の音量に調整しましょう。
耳鳴りの治療に補聴器が効果的な2つの理由
耳鳴りの治療には補聴器が効果的です。その理由として、以下の2つがあります。
- 脳の感度を下げるため
- 耳鳴りが気にならないようにするため
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
脳の感度が下がるため
補聴器は音に対する脳の感度を下げ、耳鳴りを軽減することが可能です。耳鳴りは聞こえない音を補うために、脳が感度をあげることが原因です。脳の感度があがると通常では聞こえない音が脳に伝わり、耳鳴りが生じます。そのため、補聴器を使用して難聴を改善することで脳の感度が下がるため、耳鳴りの治療に効果が期待できます。
耳鳴りが気にならないようになるため
補聴器の使用による耳鳴りの完治は困難ですが、耳鳴りがあっても気にならない状態にすることが可能です。耳鳴りは音がないときのほうが感じやすくなります。補聴器で周囲の音を取り入れることで、耳鳴りが気にならないようになります。
難聴の症状として耳鳴りが起こることもある
難聴の症状として耳鳴りが起こっている場合もあるため、早い段階で医療機関を受診することをおすすめします。
難聴による耳鳴りの場合、聞こえにくくなった音と似た高さの耳鳴りがするのが特徴的です。高い音が聞こえにくい場合は「キーン」や「シーン」といった音色、低い音が聞こえにくい場合は「ブーン」といった音色の耳鳴りが生じやすいです。
難聴と耳鳴りは互いに関係している可能性があるため、放置したままだと症状はさらに悪化します。声などが聞こえにくいと感じたら耳鼻科などの医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
補聴器ではなく薬での治療が有効の場合も
耳鳴りの原因が疾患である場合、補聴器よりも薬による治療を優先する場合もあります。耳鳴りが生じる疾患には以下のようなものがあります。
- 中耳炎
- 外耳炎
- 内耳炎
- 突発性難聴
- メニエール病
これらの疾患の要因はさまざまで、疲労や加齢、ストレス、生活習慣の乱れによる場合もあります。薬による治療の場合、抗生剤やビタミン剤、抗不安薬などそれぞれの要因に合った薬を処方します。
疾患による難聴は補聴器を使用するよりも、早い段階から薬による治療を始めることが大切です。早期発見につなげるためにも、耳鳴りが気になり始めたら早めに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。
耳鳴りは生活習慣の改善でも改善する
耳鳴りは生活習慣を整えることによって症状の改善が期待できます。症状が改善する具体的な方法は以下のとおりです。
- 十分な睡眠をとる
- 血流を改善する
- ストレスを発散する
- カフェインやアルコールを控える
- 適度に運動する
耳鳴りは自律神経のはたらきや血流の流れが乱れることで悪化する場合がありますので、そのような生活習慣は控えましょう。音のない場所だと耳鳴りが気になってしまうため、静かな場所を避けることも大切です。
乱れた生活習慣や環境の改善に向けた行動が、耳鳴りの症状の緩和につながります。日頃の生活を見直し、改善点に取り組んでいきましょう。
耳鳴りが気になる場合は耳鼻咽頭科を受診しよう
耳鳴りは原因によって治療法が異なりますが、発見が遅れると完治が難しくなる可能性もあります。早い段階で病院を受診することで、症状に合った治療が可能です。治療は薬だけでなく、補聴器の使用や自宅の環境調整によって治療する場合もあります。今まで聞こえていた音が聞こえなくなったり耳鳴りが気になったりした場合には、まずは専門である耳鼻咽喉科を受診しましょう。