花粉症治療の注射5種類をご紹介!注射のメリット・デメリットや費用についても解説

花粉症の時期になると、毎年同じ薬を使っていませんか?花粉症の治療には飲み薬以外にも5種類の注射薬が使用できます。この記事では注射薬の効果や使用期間、メリット・デメリットについて解説します。費用についてもまとめているので、使用中の薬に効果を感じていない方はぜひ参考にしてください。

花粉症の治し方については以下の動画でも解説していますので、動画で確認したい方はぜひご覧ください。

目次

花粉症治療の注射は5種類ある

花粉症治療に使用可能な注射薬は以下の5種類です。

  • アレルゲン免疫療法
  • ヒスタグロビン注射
  • ステロイド注射(保険適用外)
  • ノイロトロピン注射
  • ゾレア皮下注用

それぞれの注射薬の効果や特徴、どのような患者さんに向いているかを紹介します。

アレルゲン免疫療法(減感作療法)

アレルゲンと呼ばれるアレルギー症状の原因物質を皮下注射で体内に取り入れ、花粉症の症状を軽減または根治させる治療法がアレルゲン免疫療法です。この治療法は減感作療法とも呼ばれます。安全性の高い治療ですが、まれにアナフィラキシーショックを起こす可能性があり、初回投与時にはとくに注意が必要です。

初回の投与は週1〜2回で、一定量を摂取して副作用など問題なければ、2週間に1回の通院頻度に変わります。

根治治療も期待できますが、アレルゲン免疫療法の効果には個人差があり、効果があるのは7割程度の人といわれています。症状が軽減するだけでも生活の質(QOL)が上がるため、花粉症に悩まされている重症の患者さんや子どもにとっては、選択する価値がある治療です。

花粉症の減感作療法には、注射以外に口から摂取する舌下免疫療法があります。舌下免疫療法については記事の後半で詳しく解説します。

ヒスタグロビン注射

ヒスタグロビン注射は、ヒト免疫グロブリンと呼ばれるヒトの血液から生成した成分を有効成分とする医薬品です。アレルゲン免疫療法ではスギやダニなど対象となる特定のアレルゲンに対して治療を行います。一方、ヒスタグロビン注射は非特異的な減感作療法のため、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などアレルギー症状全般に効果がある治療法です。

通院頻度は週1〜2回で合計6回の注射を1クールとし、1クールで効果がでなければ投与量を増やします。効果があらわれたあとは、維持するために3〜4ヵ月に1回の注射を継続して投与します。

花粉症だけでなく、気管支喘息やアトピー性皮膚炎にも悩んでいる方は、ヒスタグロビン注射での治療を検討してください。

ヒスタグロビン注射について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

>> 【花粉症治療】ヒスタグロビン注射とは?期待できる効果や適用される保険について解説

ステロイド注射(保険適用外)

ステロイド薬は炎症を抑制する効果のある医薬品ですが、現在は花粉症治療に対してステロイド注射はほとんど使用されていません

ステロイド注射の炎症抑制作用は強く、1回の注射で2〜3ヵ月間効果が継続します。しかし、ステロイド薬は全身の細胞に影響を与えるため、使用する際は副作用のリスクが避けられません。ステロイドによる副作用が重症な場合、感染症の誘発・骨粗しょう症・消化性潰瘍・血栓症など生活に支障がでる可能性もあります。

ただし、注射ではなく点鼻のステロイド剤はガイドラインで使用が認められており、安全度の高い治療方法です。

ノイロトロピン注射

ノイトロピン注射は、アレルギー性鼻炎をはじめ、皮膚のかゆみや神経痛など複数の疾患に対して効果をもつ医薬品です。ノイトロピン注射を使用した臨床試験では、アレルギー性鼻炎によるくしゃみ・鼻づまり・鼻水の症状を改善したという報告があります。投与期間は6週間ですが、2週間で効果がない場合は投与を中止します。

効き方が他の薬と違うため、内服薬などと併用して使うことも可能です。現在使っている薬だけでは効果を感じていない方でも、花粉症の改善が期待できる治療法です。

ノイロトロピン注射について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

>> 花粉症に効く「ノイロトロピン注射」とは?具体的な効果や副作用、費用についてくわしく解説

ゾレア皮下注用

ゾレアは他の薬剤と異なり、既存の治療では十分な効果が得られない患者さんなど、重症以上の花粉症患者さんを対象に使用される注射薬です。

ゾレアはヒトの抗体を産生できるように、動物の細胞から作られたモノクローナル抗体です。アレルギー症状の元となる物質が細胞に結合することを防ぎ、炎症を抑制することで効果を示します。

花粉症の重症度分類は、鼻閉・くしゃみ発作または鼻漏の度合いと回数で決まります。1日中鼻が詰まって苦しい状態や、1日に21回以上くしゃみや鼻水が続く場合は最重症に分類され、ゾレアの使用を検討する目安です。ゾレアの投与頻度は2週間または4週間に1回で、患者さんの血液検査の結果に合わせて投与量を変更します。

花粉症治療のために注射を打つメリット

花粉症治療に使われる注射治療のメリットは以下の通りです。

  • 即効性がある
  • 治療期間が短い
  • 根治につながる

全ての注射薬に即効性があるわけではありませんが、ステロイド注射は即効性が高い注射治療です。2~3ヵ月に1回の注射で効果が続くため治療期間も短いです。花粉症の症状によって、QOLが著しく低下する重症の方には必要な場合もあります。

アレルゲン免疫療法は花粉症の根治治療のため、花粉症の症状が今後なくなる可能性も期待できる治療法です。最初は週1〜2回の注射が必要な薬が多いですが、維持期間に移行すると2週間に1回の頻度に減ります。

花粉症治療のために注射を打つデメリット

注射薬を利用した花粉症治療のデメリットは以下の通りです。

  • 副作用がある
  • 通院頻度が高い

注射薬には注射部位に炎症や痛みを感じるデメリットがあります。

ステロイド注射の場合、体調や体質、年齢によって副作用が重症化する危険性もあるため、花粉症に使用できる医療機関は多くありません。注射薬は自己投与ができない薬剤が多く、定期的に通院しないといけないことをデメリットに感じる患者さんもいます

花粉症治療の注射にかかる費用

花粉症治療に注射薬を使用する場合、費用の目安は以下の通りです。

治療薬名医療費
アレルゲン免疫療法1ヶ月あたり2,800~9,000円程度(3割負担)
ステロイド注射1回5,000円程度(自由診療)*1
ノイロトロピン注射初診 1,100円程度(3割負担)再診 500円程度(3割負担)*2
ヒスタグロビン注射初診 1回1500円程度(3割負担)再診 1回600円程度(3割負担)
ゾレア皮下注射1ヶ月あたり4,000~52,500円程度(3割負担)*3 

*1 花粉症治療で使用するステロイド注射は保険適用されません。

*2 投与頻度は週1〜2回、投与期間は最長6週間です。

*3 初回投与前の血液検査の結果・体重に基づく使用量に合わせて医療費も変わります。

注射以外の花粉症の治療法とは

花粉症の治療方法には注射以外で主に以下の3つがあります。

  • 飲み薬による治療
  • 舌下免疫療法による治療
  • 手術による治療

注射とは違うメリットやデメリットがあります。それぞれの治療について特徴を紹介します。

飲み薬による治療

飲み薬による治療は、花粉症治療の中で一番多くおこなわれる方法です。抗ヒスタミン薬を服用すると、花粉によって体内で増えるヒスタミンの量を減らし、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を改善します。抗ヒスタミン薬は種類も多く市販でも購入できますが、病院の処方薬は公的保険が使えるため、安価でもらえる場合が多いです。

副作用で眠気や倦怠感がある患者さんや妊婦さんに対して、漢方薬による治療も増えています。病院では貼付剤・点眼薬・点鼻薬など別の薬も処方してもらえるので、飲み薬を使用する場合もまずは病院に相談しましょう。

舌下免疫療法による治療

舌下免疫療法は減感作療法の一つで、根治の可能性がある花粉症治療です。現時点で保険適用されているのはスギとダニのみですが、花粉症患者さんの70%はスギ花粉症なので、多くの方が対象となります。

舌下免疫療法の開始時期は、花粉の飛散時期を避けた6〜11月と決められており、治療期間である2〜3年は毎日使用します。舌下免疫療法による花粉症の根治は100%ではありませんが、花粉症による症状が軽減する可能性はあります。最近では花粉症の発症が低年齢化しているため、注射が苦手な子どもでも根治利用を開始できる点や、注射と違い通院頻度を1~2ヵ月に1回にできる点は舌下免疫療法のメリットです。

手術による治療

手術による花粉症治療は、鼻炎症状がひどく、飲み薬や点鼻薬で効果が得られず日常生活に支障がある方が対象です。手術をすることで薬や注射をしなくても快適に過ごせるようになります。

花粉症治療の手術は以下の5種類です。

  • レーザー手術
  • 粘膜下下甲介骨切除術
  • 後鼻神経切断手術
  • 鼻中隔矯正術

ご自身の症状にどの手術が必要なのかは、症状や適応の有無に合わせて耳鼻咽喉科の医師が診察して判断します。鼻中隔矯正術は手術当日から1週間ほどの入院が必要な場合がありますが、他の手術は1時間以内に終了し、日帰りが可能です。

花粉症治療の注射の相談は耳鼻咽頭科へ

花粉症治療で使用できる注射薬を紹介しました。

ステロイド薬は1回の注射で効果が継続しますが、副作用の懸念から厚生労働省が使用に関して注意喚起している薬です。一方で根治治療が期待できるアレルゲン免疫療法や、重症の患者さんが使用できるゾレア皮下注用などあり、注射薬は花粉症治療の選択肢を広げます。注射薬以外にも飲み薬による対症療法、舌下免疫療法や手術による治療もあります。注射薬の使用も含めて、ご自身に最適な花粉症治療を行うためにまずは耳鼻咽頭科へご相談ください

また、花粉症の対策は以下の動画でも解説していますので、詳しく知りたいかたはぜひチェックしてみてください。

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この記事の監修者

山中 弘明のアバター 山中 弘明 よし耳鼻咽喉科 院長

【経歴】
・東京医科大学医学部 卒業
・東京医科大学八王子医療センター 初期研修修了
・日本大学板橋病院 勤務
・日本大学病院 勤務
・都立広尾病院 勤務
・よし耳鼻咽喉科 承継

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・身体障害者福祉法 第15条 指定医
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医

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