毎年の花粉症シーズンが辛く、薬を飲んでも症状がなかなか改善されないとお悩みではありませんか？
最新の注射治療「ゾレア」は、耳鼻咽喉科の専門医も推奨する保険適用の新しい治療法です。従来の内服薬や点鼻薬で十分な効果が得られなかった重い症状に対して、体の根本からアレルギー反応を抑え、生活の質を向上させる可能性があります。副作用にも配慮され、安全性も確保されています。
この記事では、ゾレアの仕組みや効果、治療の流れ、費用、副作用など、知っておくべきポイントを詳しく解説します。
ゾレアって何？
ゾレア（一般名：オマリズマブ）は、花粉などが原因で体内で作られるタンパク質「IgE」にくっつき、炎症が起こるのを根本から抑える働きをするお薬です。これにより、アレルギー反応が始まる前に、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった炎症を抑える働きをします。
もともとは喘息や慢性蕁麻疹などの重いアレルギー疾患の治療に使われていましたが、2020年からはスギ花粉症（季節性アレルギー性鼻炎）にも保険適用され、従来の治療で十分な効果が得られなかった重症の方に新たな選択肢として提供されています。
ゾレアは花粉症などのアレルギー症状を抑える薬
「ゾレア」は、花粉症などのアレルギー症状を根本から抑えるために開発されたお薬です。
作用の仕組み
ゾレアは、体内で花粉などによって作られるIgEというタンパク質にくっつきます。これにより、IgEがアレルギー反応を引き起こす細胞（肥満細胞）と結合しにくくなり、ヒスタミンなどの炎症を起こす物質が放出されるのを防ぎます。
効果
その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が軽くなります。
従来の抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬で十分な効果が得られなかった重症の花粉症患者さんに特に効果が期待できます。さらに、ゾレアは喘息や原因不明の慢性蕁麻疹にも用いられ、広い範囲のアレルギー症状に対応できる信頼のお薬です。
ゾレアは注射で投与する
ゾレアは皮下に注射するお薬です。
投与方法
自分で服用するタイプではなく、医療機関で医師または看護師が上腕の外側（二の腕）や場合によっては腹部に注射します。
治療前の準備
治療を始める前には、血液検査で体内のIgEの量と体重を測定し、あなたに最適な投与量と注射の間隔を決めます。
オーダーメイド治療
ゾレアは、患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの治療ですので、自己判断で使うことはできず、必ず専門医の管理のもとで行われます。
ゾレアの効果を解説
ゾレアは、さまざまなアレルギー疾患に対して効果を示しています。
ここでは、代表的な症状別にその効果を説明します。
季節性アレルギー性鼻炎（花粉症）
スギ花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎に対して、ゾレアは劇的な効果を発揮するケースがあります。従来の内服薬・点鼻薬では抑えきれなかったくしゃみや鼻水･鼻づまりが大きく軽減し、毎日ティッシュが手放せなかった状態から解放される、夜間の鼻づまりが改善し質の良い睡眠が取れる、目のかゆみも和らぎ生活全体の質が向上するといった日常生活が送りやすくなることが期待できます。
喘息（ぜんそく）
アレルギー性の喘息に対してもゾレアは有効です。特に、既存の吸入ステロイドや気管支拡張薬でコントロール困難な重症喘息患者さんにおいてゾレア追加により、夜中の発作が減り安定した呼吸が得られる、肺機能検査の結果が改善する、長年使っていた吸入薬の量を減らせるといった改善が期待できます。
蕁麻疹（じんましん）
特発性慢性蕁麻疹とは、原因が特定できず繰り返し皮膚に膨疹（ブツブツ）やかゆみが出る病気です。ゾレアはこの難治性蕁麻疹にも効果を示します。ゾレア投与により、慢性蕁麻疹の患者さんでは、いつも出る赤い膨らみが減り見た目が改善される、かゆみが和らぎ日常生活でのストレスが軽減されるといった症状改善が報告されています。
ゾレアの主な副作用とは？
強力なお薬であるため、副作用についても知っておくことが大切です。
注射部位の反応
ゾレアで最も多く報告されている副作用は注射した部位での反応です。
具体的には、注射部位の赤み、腫れ、かゆみ、痛みなどがあります。
これらはインフルエンザの予防接種など一般的な注射でも見られる反応と同様で、通常は軽度であり数日以内に自然に治まることがほとんどです。
アナフィラキシーショック
ごく稀ですが、ゾレア投与後に強い全身反応（アナフィラキシーショック）が起こる可能性があります。息苦しさ、めまい、全身の発疹、口や喉の腫れ、血圧の低下などが現れた場合はすぐに医療機関へ受診しましょう。初回投与後は2時間ほど病院で様子をみたり、2回目以降も短時間の経過観察を行います。
ゾレアを受ける前に知っておきたいポイントを解説
ゾレアが受けられる人の条件
ゾレア治療は、すべての人が受けられるわけではなく、以下の条件を満たす方が対象です。
重症または最重症の花粉症
前シーズンも症状が重かった方が対象です。
軽症の花粉症では保険適用になりません。
血液検査で、スギ花粉に対するIgEが高いこと
具体的には特異的IgEのクラスが3以上である必要があります。
スギ以外のアレルゲンでもIgE値が高い場合は考慮されます。
12歳以上であること
小児（11歳以下）は適応外です。また、体重および総IgE値がゾレアの投与量決定範囲（概ね体重20～150kg、IgE値30～1500IU/mL）に入っている必要があります。
通常の治療（内服薬、点鼻薬）を一定期間試しても効果がなかったこと
花粉シーズン中に少なくとも1週間以上、抗ヒスタミン内服やステロイド点鼻など標準治療を試みても症状が改善しなかった場合に限ります。
要約すると、「検査でスギ花粉症と分かっている重症患者さん」が対象です。
治療開始前には必ず血液検査などの事前評価が行われ、条件を満たさなければゾレアは使えませんので、適応に当てはまるかどうかは受診時に確認してもらいましょう。
ゾレアが特におすすめな人とは？
上記の条件をクリアしている場合でも、ゾレア治療を特に検討すべき人がいます。
次のような状況に心当たりがある方はゾレアによるメリットが大きいでしょう。
薬を飲んでも鼻水やくしゃみが止まらない人
抗ヒスタミン薬や点鼻薬を真面目に使っても、一日中ティッシュが手放せないほど症状が酷い方。こうした重度の花粉症の方にゾレアは効果を発揮しやすいです。
内服薬の副作用で眠気などがひどく、薬の増量が難しい人
抗アレルギー薬の眠気など副作用が強く出てしまい、薬の増量や強い薬剤への変更が難しい方。ゾレアは作用機序が異なるため、こうした場合の次の一手として有力です。
これまであらゆる治療を試しても効果が感じられなかった人
内服、点鼻、点眼とできる限りの治療をしても症状が良くならない方。
従来法で打つ手が無い場合に、ゾレアは画期的な新治療となります。
受験や大事な仕事があり、絶対に症状を抑えたい人
例えば「受験を控えている」「大事なプロジェクトを抱えている」など、どうしても花粉症で寝込んでいられない事情がある場合です。ゾレアは即効性と高い有効率が期待できるため、ここぞという年の対策として検討されます。
「毎年春が来るのが怖い」「薬で眠くなって仕事にならない」という方は、ぜひゾレア治療を選択肢に入れてみてください。担当医とよく相談し、必要性や適応の有無を判断してもらいましょう。
ゾレア治療にかかる費用を解説
ゾレアは保険適用ですが、投与量や頻度により費用は変動します。
薬剤費の目安（3割負担の場合）
75mgを4週間ごと：約4,000～5,000円
150mgを4週間ごと：約6,500円
300mgを4週間ごと：約13,000円
300mgを2週間ごと：約26,000円
600mgを4週間ごと：約26,000円
600mgを2週間ごと：約52,000～70,000円弱
※これらはあくまで目安で、実際の費用は個々の状態により異なります。
その他費用
ゾレアのお薬の値段以外にも、病院での診察料や検査の費用、さらにゾレアと一緒に使うことが多い抗ヒスタミン薬の処方料などがかかります。特に初めて受診する場合は、検査項目が多いため初診料など追加の費用が発生することもありますが、これらは一般的な医療費の範囲内で、極端に高くなることはありません。
公的助成
高額療養費制度など、一定の医療費を超えた場合にその負担を軽くする制度も利用できます。特に、12歳から高校生までのお子さんの場合は、お住まいの自治体で子ども医療費助成を受けられることがあります。たとえば、中学生まで医療費が無料の地域では、ゾレア治療も実質的に無料または低額で受けられる場合があります。また、成人の方でも、自己負担の上限額を超えた分は払い戻しが受けられるので、費用面が心配な場合は事前に役所や医療機関に相談すると安心です。
ゾレアの投与スケジュールとは？
治療開始前はまず、医師の問診と血液検査で花粉症の重症度やIgE値を確認します。
初回受診
花粉症の症状や既往歴について問診し、重症花粉症かどうか評価します。同時に血液検査を実施し、スギ花粉に対するIgE抗体価や総IgE値を測定します。この日はまず従来の治療（飲み薬や点鼻）を開始し、検査結果が出るまで経過を見ます。
2回目の受診
血液検査の結果を確認し、既存治療の効果判定を行います。症状がまだ重い場合、検査データを基にゾレアの投与量・投与間隔を算出します。患者さんの同意が得られればゾレア治療の準備に入ります。
3回目の受診
ゾレアの初回投与日です。診察後、ゾレアの皮下注射を行います。同時に必要に応じて併用する飲み薬の処方も受けます。初回投与後は院内で一定時間待機し、副作用がないことを確認して帰宅となります。
花粉シーズン中は、最大で12週間（4週間ごとなら3回、2週間ごとなら6回）の注射を行い、そのシーズンの症状を抑えます。喘息やじんましんの場合は、年間を通じて定期的に注射するケースもあります。
※施設によっては2回目と3回目を同日にまとめるケースもありますが、安全確認のため少なくとも複数回の受診が必要と認識しておきましょう。
アレルギー症状に悩む場合はゾレアを検討しよう
もし、毎年の花粉症で「今年もまたつらい日々が続く…」と感じているなら、ゾレア治療を検討する価値があります。従来の薬で十分な効果が得られなかった方も、ゾレアなら症状が大きく改善される可能性があります。
まずは、耳鼻咽喉科やアレルギー専門クリニックでご自身の状態をしっかりと診てもらい、治療が適しているかどうか確認しましょう。
専門医と相談することで、あなたにぴったりの治療計画が立てられ、快適な毎日を取り戻す一歩となるでしょう。
