【保存版】摂食嚥下障害の訓練・リハビリ方法を自宅でできるように紹介!

目次

嚥下障害を改善するための自宅でもできる訓練方法とは

嚥下障害の訓練方法には食べ物を用いない間接訓練(基礎訓練)と食べ物を用いて行う直接訓練(接触訓練)と2つの種類があります。間接訓練は誤嚥の危険が高い時や食べ物を食べるのがむずかしい状態の時に行います。しかし、食べ物が食べれる状態のときでも食事前の準備体操のために間接訓練を行うことがあります。実際、間接訓練と直接訓練はしばしば並行して行われます。

>>嚥下障害とはどんな病気?症状や原因・予防・治療方法を解説

食べ物を用いない間接訓練の具体的な手順・注意点

間接訓練とは「食べ物を用いない訓練」のことです。嚥下に必要な筋肉をほぐしたり、鍛えたり、神経を刺激したりします。食事前の準備運動として行うこともあります。

<間接訓練が向いている人の特徴>

  • 重篤な誤嚥をおこす可能性のある人
  • 意識状態が安定しないなど口から食べ物を食べるのが難しい人

<具体的なトレーニング>

  1. 嚥下体操
  2. 開口訓練
  3. 口唇・舌・頬の訓練
  4. チューブ嚥下訓練
  5. バルーン法
  6. ブローイング訓練
  7. アイスマッサージ(唾液腺、のど)
  8. 氷なめ訓練
  9. 呼吸トレーニング
  10. プッシング訓練
  11. 頭部挙上訓練(シャキア・エクササイズ )

嚥下機能の筋肉をほぐす嚥下体操

嚥下体操は顔や首の筋肉の緊張を解きほぐし、同時に筋肉を鍛えることを目標として行います。高齢者の方全般を対象としており、食事できない方の訓練として、また食事できる方は食事前の準備体操としても行います。首が痛い人は首の部分は実施しなくて問題ありません。

<具体的な手順>

  1. ゆっくり深呼吸をする
  2. 首を回す
  3. 肩を上げ下げする
  4. 両手を頭の上で組んで軽く伸びをし、左右の脇を順番に伸ばす
  5. 頬を膨らませたりすぼめたりする
  6. 舌を出したり、引いたりする
  7. 舌で左右の口角にさわる
  8. 息がのどにあたるように強くすって止め、3つ数えてはく
  9. パパパ、タタタ、カカカとゆっくりいう
  10. ゆっくり深呼吸をする

舌の上の筋肉を鍛える開口訓練

食べ物を口の中から喉に送るときに舌を上あごにつける必要があります。開口訓練とはその舌をあげて上あごにつける動作が苦手で意思疎通ができる方を対象として行う筋力トレーニングです。口を開くときに痛みがある場合や顎が外れてしまう方は実施を控えるようにしましょう。

<具体的な手順>

  1. 口を思いっきり開けて、10秒間キープする
  2. 口を閉じて10秒間休憩する

口腔器官の機能向上をする口唇・舌・頬の訓練

食べ物を咀嚼し喉に送り込むことが苦手な方を対象に行います。目的は口周りの筋肉を鍛えたり、マッサージすることで使えるようにすることです。粘膜を傷つけないよう気を付けて行う必要があります。

<具体的な手順>

  1. 【口唇のマッサージ】親指と人差し指で上唇をつまんで前に引っ張り、その後横に伸ばす。下唇も同様におこなう。
  2. 【頬のマッサージ】患者さんの口の中に指を入れる。指で頬の内側を刺激し、上から下へ引っ張るようにマッサージする。反対側も同様におこなう。
  3. 【舌のマッサージ】ガーゼを準備する。ガーゼで患者さんの舌をやさしくつかみ、ゆっくり引き出す。前後、左右、上下に舌を動かす。

咽頭期の嚥下運動を改善させるチューブ嚥下訓練

嚥下反射がなくなっている方(ものがのどに触れてもおえっとしない方)を対象に行います。「ごっくん」と飲み込む嚥下機能を、チューブを鼻や口からいれて刺激を与えることで改善させることが目的です。医療従事者と一緒に行う必要がある訓練です。

<具体的な手順>

  1. チューブを鼻や口からいれる
  2. チューブの先端を食道入口から咽頭の範囲で出し入れをする
  3. 食べ物を喉に送ることの改善を目的とした場合には、チューブを舌の上に置き、舌で喉へ送り込んで飲み込ませるようにする

食道を広げるバルーン法

バルーン法は食道付近の筋肉が弱まり、食べ物がうまく通らない方が対象で食道の入り口を広げ、食べ物が通るようにする目的で行います。この訓練は医療従事者と一緒に行う必要があります。

<具体的な手順>

  1. バルーンが先についたチューブを口の中から入れる
  2. 食道付近まで来たらバルーンに空気を入れて膨らませる
  3. 患者さんがごっくんとすると同時にチューブをぬく

鼻咽腔の筋肉を活性化させるブローイング訓練

通常は鼻腔と口腔が分離されており、口から取り入れた食べ物が鼻に入ることはありません。ブローイング訓練は鼻咽腔閉鎖不全(筋肉や神経の障害により鼻腔と口腔を分離できなくなった状態)になり食べ物や飲み物が鼻に逆流してしまう方を対象に行います。空気を吹くことで鼻や喉の周りの神経や筋肉を活性化させる目的で行います。

<具体的な手順>

  1. ストローと水を入れたコップを用意する
  2. 患者さんはストローをくわえ、静かに長くぶくぶくと泡立つように空気を吹く

食事のときに合わせて行う直接訓練の具体的な手順・注意点

直接訓練とは「食べ物を使う嚥下訓練」です。安全に食べ物を口から食べられると判断された患者さんに行います。長期間食事を行っていなかった方の場合は、窒息や誤嚥を防ぐために、医師の指示のもとでおこなうようにしてください。

<直接訓練が向いている人の特徴>

・口から食べ物を食べられると判断された人

・全身状態が安定している人

<具体的なトレーニング>

  1. 嚥下の意識化 
  2. 交互嚥下
  3. スライス型ゼリー丸のみ法 
  4. 一口量の調整 
  5. 体幹角度調整 
  6. 横向き嚥下
  7. 鼻つまみ嚥下 
  8. 複数回嚥下
  9. ストローピペット法 

嚥下の意識化

食事に集中できていない方、特に液体でむせる方が対象です。普段、無意識で行われる飲み込む動作を「意識する」ことで誤嚥を予防する目的で実施します。人によっては口頭での声かけがないほうが良いこともあるので注意が必要です。

<具体的な手順>

  1. 食事に集中できるよう環境を整える(テレビを消すなど)
  2. 飲み込むときに「はい、飲み込みましょう」など声かけをする

異なる形状の食べ物を交互に嚥下

食事の際に口の中や喉、食道に食べ物の残りかすが残ってしまう方が対象で、残りかすを減らす目的で実施します。交互に食べる指示が守れない方や誤嚥の危険が低い方は食事の最後に水分をとったり、ゼリーを食べることでも問題ありません。

<具体的な手順>

  1. 固形物と流動物を用意する(ご飯とお味噌汁など)
  2. 固形物と流動物を交互に食べてもらう
  3. 食事の最後には水分をとるか、ゼリーをのみこむ

スライス型ゼリー丸のみ法

食べ物をうまく食べられない方、喉に食べ物の残りかすが多い方、しばらく口から食事していなかった方が対象で誤嚥の予防や食べ物の残りかすを減らす目的で実施します。ゼリーを咀嚼してしまう人は対象外とします。

<具体的な手順>

  1. 薄くスライスしたゼリーを用意する
  2. 噛まずに丸のみしてもらう

咀嚼できる大きさに一口量を調整

嚥下機能にリスクのあるすべての方が対象で誤嚥の予防、食事の際に食べ物の残りかすを減らす目的で行います。すべての人に共通な一口量はなく、また同じ人でも状態によって変わります。そのため、食べている様子を見て常に一口量を調節する必要があります。

<具体的な手順>

  1. 口の中に入る、また飲み込める量の大きさ、形状のスプーンを選ぶ
  2. 患者の食べてる様子を見て調整する

誤嚥を防ぐために角度調整

食べ物を口から喉に送り込むことが苦手な方、誤嚥をおこしやすい方を対象に行います。目的は誤嚥を防ぐこと、食べ物を喉に送りやすくすることです。嚥下障害が重症である方はリクライニングの角度を水平に近くすると良いといわれています。しかし、個人によって適切な角度は異なるため、状態を見て判断する必要があります。

<具体的な手順>

  1. リクライニングの角度を30~60度の間に調整する
  2. 個人によって適切な角度は異なるため、相談しながら適切な角度を決める

そもそも嚥下障害の原因とは

嚥下障害とは食べ物や飲み物、唾液をうまく飲み込めないことをさします。また、その原因は嚥下に必要な筋肉や神経などの機能が低下することや、他の病気です。例えば脳血管障害(脳梗塞や脳出血)や神経・筋肉の関連する疾患、年齢に伴う筋力の低下などです。

>>嚥下障害とはどんな病気?症状や原因・予防・治療方法を解説

嚥下障害の症状に心当たりがある場合はまず病院へ

嚥下障害の症状に心当たりがある場合には医師に診てもらうことをおすすめいたします。嚥下障害は重篤な疾患が隠れている可能性もあるためです。病院を受診した上で嚥下訓練を行い、食事を楽しめる体を維持していくようにしましょう。

記事を読んで不明点や個人的な質問があれば、江東区 東大島駅徒歩1分 よし耳鼻咽喉科までお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修者

山中 弘明のアバター 山中 弘明 よし耳鼻咽喉科 院長

【経歴】
・東京医科大学医学部 卒業
・東京医科大学八王子医療センター 初期研修修了
・日本大学板橋病院 勤務
・日本大学病院 勤務
・都立広尾病院 勤務
・よし耳鼻咽喉科 承継

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・身体障害者福祉法 第15条 指定医
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医

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