朝目が覚めたら声がかすれたり、声が出なくなったりして驚いたことはありませんか?それは喉頭炎による影響かもしれません。
適切に対応することで予防できたり、早く治したりすることも可能です。この記事では喉頭炎の主な症状・原因・治療法や予防方法についてわかりやすく解説します。
喉頭炎とはこんな病気
喉頭炎(こうとうえん)とは、のどの奥にある咽頭(いんとう)と気管をつないでいる喉頭に炎症がおこる病気です。3カ月~3歳位の乳幼児の喉頭に炎症が起こると、犬の遠吠えのような特徴的な咳が出る場合があります(クループ症候群・声門下喉頭炎)。
喉頭には声を出すための声帯や、食べ物が気管に入らないようにフタをする喉頭蓋(こうとうがい)
があり、炎症の部位によっては発声障害や誤嚥が起こる可能性があります。
ウイルス感染をきっかけに発症することが多いですが、声の使いすぎや喫煙習慣などが原因で発症する場合もあります。
急性喉頭炎と慢性喉頭炎の違い
喉頭炎には急性喉頭炎と慢性喉頭炎があり、2つの違いは発症原因と症状です。急性喉頭炎はウイルス感染などが原因で急激に症状が進行しますが、慢性喉頭炎は急性喉頭炎を繰り返したり、発声や喫煙など慢性的な刺激が続いたりすることで発症します。
急性喉頭炎は発熱やのどの痛みといった主に風邪のような症状があらわれますが、慢性喉頭炎は主に声がれなどの症状があらわれます。
喉頭炎の主な症状
喉頭は呼吸や発声に関与しており、炎症などで喉頭が腫れてしまうと呼吸がしにくくなったり、声がかすれたりしてしまいます。
喉頭炎の主な症状は以下の通りです。
- 声のかすれ
- 声が出しにくい
- 続く咳
- 痰
- のどの痛み
- 発熱
乳幼児のクループ症候群では、オットセイが鳴くようなケーンケーンという咳や、炎症がひどい場合呼吸困難をおこしてしまう可能性があります。
初期症状はのどの痛みや発熱、倦怠感
喉頭炎の初期症状は、風邪のようにのどの痛みや発熱、倦怠感などの症状が出ます。声を出す声帯部分の炎症が強いと、初期症状から声枯れや声の出しにくさを感じる方もいます。
喉頭炎の痛みのピークは最初の2~3日
喉頭炎の痛みの症状は、最初の2〜3日がピークです。声を出さず安静にしていれば、1週間程度で改善する方が多いです。長引く場合は別の病気が原因の可能性も考えられますので、はやめに専門医へご相談ください。
喉頭炎の原因
喉頭炎の主な原因はウイルス感染や細菌感染です。喫煙やホコリなどの刺激も喉頭炎の原因になりますので、禁煙を心がけてマスクを着用してください。
喉頭は声を出す部位である声帯に近いため、声の出し過ぎも良くないです。また、胃酸がのどに戻ってくる逆流性食道炎が原因で発症したり、喉頭炎がひどくなったりする場合もあります。
喉頭炎はうつることもある
喉頭炎はウイルス感染や細菌感染が原因で発症することもあるため、他人にうつる可能性があります。しかし、うつされた方も同様に喉頭炎になるとは限りません。
うつされた方の免疫機能が低下している部位に応じて、副鼻腔や咽頭など別の部位に炎症がおこる場合があります。
ストレスが原因の場合もある
ストレスが溜まると免疫機能が低下するため、ウイルス感染や細菌感染による喉頭炎を引き起こしやすくなります。
また、ストレスが原因でのどの異物感や不快感などの症状が出る咽喉頭異常感症(ヒステリー球)という病気もあります。どちらもストレスが原因で発症する可能性がありますので、ストレスは溜めないようにしましょう。
喉頭炎の治療方法
喉頭炎の治療方法は、原因や症状に応じた対症療法が基本になります。喉頭炎の主な治療方法は以下の通りです。
- 炎症を抑える薬や、鎮咳薬などを使用
- 細菌感染が原因の場合は抗生剤による治療
- ネブライザー治療
室内の乾燥を避けて声をあまり使わないようにするなど、生活環境を整えることも大切です。
薬で炎症を抑える
痛みや腫れの原因である喉頭の炎症は、トラネキサム酸という抗炎症薬で抑えることが期待できます。咳き込むと刺激になってしまい症状悪化につながりますので、咳がひどい方は鎮咳薬も使用します。
抗生剤を使う
検査をおこない、細菌感染が原因の場合は抗生剤を使用します。症状が改善したからといって途中で服用をやめてしまうと、ひどい合併症をおこしてしまうかもしれません。
処方された抗生剤はきちんと最後まで服用してください。
ネブライザー治療
ネブライザー治療とは、液体の薬を霧状にして吸入することで炎症部位に薬を直接投与する治療方法です。吸入する薬は症状や原因に応じて抗生剤やステロイドが使われます。
この治療は外来受診の時に、その場でおこなうことが可能です。
栄養補給と睡眠も重要
喉頭炎の治療には適切な栄養補給と睡眠が重要です。のどの痛みがひどくて食事が食べられない方は、点滴などで栄養補給をおこなう場合があります。
しっかり睡眠をとって身体を休ませることも、早く良くなるためには大切なことです。
治るまでの期間
通常は安静にして適切に治療をおこなえば1週間程度で良くなります。声帯の炎症がひどく、声が出せなくなってしまった場合では、1ヵ月以上治療に時間がかかることもあります。
喉頭炎の診断方法
問診や患者さんの発声状況、のどを直接診て診断します。鼻から内視鏡カメラをいれることで、喉頭の動きや腫れなどに問題ないか目視で確認することが可能です。
細菌感染や別の病気を疑った場合は、細菌検査や血液検査もおこないます。
症状がひどい場合は入院する場合もある
声がまったく出なかったり、呼吸ができないほど症状がひどかったりした場合は、入院して治療することもあります。
特に乳幼児のクループ症候群は夜間に悪化することが多く、呼吸困難で病院へ運ばれてそのまま入院することもあるのです。のどの腫れがおさまれば退院できますので、ほとんどの方の入院期間は短いです。
喉頭炎を予防する方法
喉頭炎は、日々の生活に注意することで予防することが出来ます。一般的な感染症対策が有効ですが、のどに負担がかかるような生活習慣を見直すことも大切です。
人前で話す機会が多い仕事をされている方は、常にのどに負担がかかっています。喉頭炎を発症・悪化させないために適切な予防対策をとりましょう。
手洗い・うがいは必須
喉頭炎の主な原因はウイルス感染です。手洗いやうがいなどで物理的にウイルスを身体から取り除くことが大事です。
こまめな手洗いやアルコール消毒はもちろん、人と会った後や自宅に帰った後は必ずうがいをしましょう。
湿度管理でウイルスの繁殖を防ぐ
空気が乾燥しているとウイルスは遠くまで飛んでしまうため、喉頭炎などの感染症が拡大しやすい環境になってしまいます。空気が乾燥することで、喉頭を含む気道粘膜の免疫機能も低下してしまうのです。
こまめな水分補給でのどの潤いを保ちつつ、加湿器などを利用して部屋の湿度が50~60%程度になるように適切にコントロールしましょう。
生活習慣が乱れないようにする
疲れや寝不足、暴飲暴食などで生活習慣が乱れてしまうと、免疫力が低下して喉頭炎を発症しやすくなります。免疫力が高ければ、体内にウイルスが侵入しても発症せずにすむ可能性が高まります。
きちんと睡眠をとり、栄養バランスの良い食事をとるよう心がけてください。
喫煙・飲酒は過度にしないようにする
喉頭炎を予防するためには、普段からのどに対する刺激を減らすことが大切です。喫煙・飲酒はのどに負担がかかってしまいます。
過度に喫煙・飲酒した翌日は声が出にくかったりのどが痛かったりしますよね。普段から声が出にくいと感じている方は、喫煙・飲酒の習慣を見直してみましょう。
喉頭炎と関連する病気
喉頭炎と関連する病気に急性上気道炎と急性咽頭炎があります。上気道とは鼻から気管までの空気の通り道のことで、喉頭や咽頭も含まれます。
喉頭炎が悪化して炎症が広がってしまうと、急性上気道炎や急性咽頭炎を併発してしまう可能性があるのです。
急性上気道炎
急性上気道炎とは、一般的に風邪といわれる病気で上気道の一部もしくは複数箇所で炎症がおこることで発症します。鼻腔・咽頭・喉頭を含む鼻から気管の手前までの部分が上気道です。
炎症がひどい部位によって、急性鼻炎・急性咽頭炎・急性喉頭炎として区別される場合があります。
急性上気道炎の症状
炎症がひどい部位に応じて鼻づまりやのどの痛み、咳などが出たり、全身症状として発熱や頭痛、倦怠感などが出たりする場合があります。その他にも、以下のような症状が出ることがあります。
- 鼻水
- 痰
- くしゃみ
- 悪寒
- 関節の痛み
- 筋肉の痛み
急性上気道炎の原因
急性上気道炎の原因の多くがウイルスによる感染です。まれに溶連菌やマイコプラズマなどの細菌感染によって発症します。
急な気候の変化やストレスなどによる免疫機能の低下も原因のひとつです。
急性上気道炎の治療方法
多くの場合は予後良好で、特に治療しなくても安静にしていれば3〜5日で改善します。熱が高かったり、鼻づまりなどがつらかったりする方には対症療法として解熱剤などを使用します。
水分をこまめにとり、安静に過ごすことも大切です。
急性咽頭炎
急性咽頭炎とは、のどの奥にある咽頭に急性の炎症が起こり、のどの痛みや発熱などを引き起こす病気です。唾液を飲み込むこともつらく感じるほどのどが痛くなる場合があります。
咽頭は鼻や口から入った空気が直接触れるため、大人から子供まで幅広い年齢で発症する可能性のある病気です。
>>【急なのど風邪?】急性咽頭炎の症状や治療方法・原因について解説!
急性咽頭炎の症状
急性咽頭炎の症状は、強いのどの痛みが出るのが特徴です。痛みがひどくて食事を満足にとれない方もいます。そのほかに発熱や咳など風邪のような症状が出る場合があります。
主な症状は以下の通りです。
- のどが痛い
- 飲み込むのがつらい(嚥下痛)
- 食事がとれない
- 痰や咳が出る
- 声がかすれる
- 発熱
- 全身の倦怠感
- 首のリンパの腫れ
急性咽頭炎の原因
急性咽頭炎の主な原因は免疫力の低下によるウイルスや細菌感染です。咽頭は外部とつながっているため、喫煙習慣や冷えて乾燥した空気も良くないです。
PM2.5や黄砂などのアレルギー反応も関与している可能性があると指摘されています。
急性咽頭炎の治療方法
急性咽頭炎は自然治癒する場合も多く、基本はつらい症状をおさえる対症療法です。患者さんの症状に合わせて、のどの炎症を抑える薬や熱を下げる薬などを使います。
炎症がひどい方は、外来でネブライザー治療をおこなう場合もあります。溶連菌などの細菌感染を起こしている場合は、合併症を防ぐために抗生剤が必要です。
クループ症候群
クループ症候群とは、小児に多い犬の鳴き声のような咳が出るウイルス性の呼吸器感染症です。特定の疾患名ではなく、特有の咳”クループ”を起こす呼吸器疾患の総称です。
クループ症候群は、生後6ヶ月から3歳児までの小児に多くみられます。
クループ症候群の症状
「犬吠様咳嗽」と呼ばれる咳がクループ症候群特有の症状で、犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のように聞こえます。気道が狭くなることで咳の音が「ヒューヒュー」「ケーンケーン」のようになり、重症化すると呼吸が困難になることがあります。
また、他の病気(中耳炎や肺炎など)との合併症のリスクがあるため、重症化する前に治しきることが重要です。
クループ症候群の原因
クループ症候群は、ウイルス性・細菌性などの感染症にかかることが主な発症原因です。呼吸器疾患の総称のため、季節の流行病が原因となり発症することが多いです。
乾燥する季節である秋冬に患者が増えるインフルエンザウイルスなどは、クループ症候群の発症に影響を与えます。その他にも、アレルギー性が原因となりクループ症候群が発症することがあります。
クループ症候群の治療方法
クループ症候群の治療方法は、対症療法が主です。
具体的には、咳や痰を抑える鎮咳去痰剤や気管を広げる気管支拡張剤など薬の内服や十分な休養など、感染症に対する治療です。
症状を引き起こしている病を完治できるように努めましょう。
喉頭炎がひどくなる前に病院へ
喉頭炎は声を出すのを控えて、安静にしていれば自然に改善する方も多いです。しかし、声が出せなくなって生活に支障がでたり、呼吸困難がひどくなったりして入院による治療が必要になる場合があります。
日頃から喉頭炎にならないよう気をつけて生活しましょう。もしのどに違和感を覚えたら、喉頭炎などがひどくなる前に専門の耳鼻咽喉科へ相談してください。
記事を読んで不明点や個人的な質問があれば、江東区 東大島駅徒歩1分 よし耳鼻咽喉科までお気軽にご連絡ください。