コロナ後遺症の味覚障害はいつ治る?味覚が戻らない原因や治療方法について詳しく解説

新型コロナウイルス感染症にかかった後、食事の味がしなかったり、いつもと味が違うと感じたりして困っていませんか?それはコロナ後遺症による味覚障害かもしれません。

この記事ではコロナ後遺症による味覚障害の症状や原因、治療法についてくわしく解説します。

目次

コロナ後遺症の味覚障害の具体的な症状

味覚障害とは、食べ物や飲み物の味が正常に感じられない状態のことを指します。具体的には薄味に感じたり、全く味がわからなくなったりするなどの症状が挙げられます。以下のような状態は味覚障害の可能性があるため注意が必要です。

  • 調味料をたくさん使うようになった
  • 食事がおいしくない
  • 口の中が苦い
  • 特定の味(甘みや酸味など)だけ感じない

全く味がしない場合は味覚障害だとわかりやすいですが、上記のように少し違う形で症状が出ることがあります。味覚障害かもしれないと不安に感じたら、耳鼻咽喉科などの専門の医療機関に相談してください。

コロナ後遺症の味覚障害の原因は「神経細胞の障害」

コロナ後遺症の味覚障害は、味覚を伝える神経細胞の障害が関与していると言われています。味覚は、以下の流れで脳に伝わることで味を認識しています。

  1. 口の中にある味蕾(みらい)で食事の味成分を感知する
  2. 神経を通じて脳に伝わる
  3. 味を認識する

味覚障害は、この流れのどこかで何らかのトラブルが起き、味を感じにくくなったり、異なる味を感じたりしている状態です。味覚障害の中でもコロナ後遺症の場合は、味成分の刺激を伝える神経がダメージを受けたり、神経周辺に炎症が起きたりすることが原因だと考えられています。

新型コロナウイルス感染症の味覚障害とコロナ後遺症の味覚障害は違う

味覚障害は、新型コロナウイルス感染症とコロナ後遺症の両方で発症します。新型コロナウイルス感染症の味覚障害は、発熱や咳、倦怠感などの症状がある状態で急に発症する一方、コロナ後遺症の味覚障害は、以下のような特徴があります。

  • 鼻症状を伴わず突然発症する
  • 同じものを食べてもいつもと味が違う
  • こげたような味がする

同じ新型コロナウイルスに関わる味覚障害でもこのような違いがあるのです。

コロナに関係なく味覚障害を発症している場合もある

味覚障害は新型コロナウイルス感染症に関係なく発症することが多い疾患です。味覚障害の原因には以下のようなものがあります。

  • 亜鉛や鉄などの不足
  • 加齢
  • 薬の副作用
  • がんや中耳炎などの病気
  • 心身症、神経症、うつなどの精神疾患

最も多い原因は亜鉛や鉄などの不足です。味蕾(みらい)は約1ヶ月で入れ替わりますが、食欲不振や偏食で亜鉛や鉄が不足すると新たな味蕾がつくれず、味覚障害を起こすことがあります。加齢に伴って味蕾の数が減るため、加齢も味を感じにくくなる原因だと言われています。

一般的な味覚障害の症状や原因については、こちらの記事でくわしく解説しています。

>> 【亜鉛不足?】味覚障害の主な症状、原因、治し方やコロナの影響について詳しく解説

コロナ後遺症の味覚障害の治療法

現時点では、コロナ後遺症の味覚障害に対して確立された治療法は存在しません。しかし、短期で改善する方もいるため、治療が必要ない方も多いです。症状が長引く場合は、亜鉛や漢方などによる治療をおこなう場合があります。

味覚障害を発症したうち60~80%は2週間で症状が改善する

コロナ感染症後に味覚障害を発症した方のうち、約60〜80%は2週間以内に症状が改善すると報告されています。完全に元の味覚が戻るまでには時間がかかることがあり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す場合もあります。

一般的には1カ月程度で味覚が戻ることが多いので、コロナ感染症後に味覚障害が起きても焦って受診する必要はありません。症状が長引く場合や、別の原因が考えられる場合などは、耳鼻咽喉科などの専門の医療機関を受診してください。

味覚障害が亜鉛で治る場合もある

コロナ後遺症の味覚障害は亜鉛の服用で必ず治るわけではありません。新型コロナウイルス感染症で食欲不振になり、亜鉛不足が原因の味覚障害を起こした場合などは、亜鉛を多く含む食事を摂ると良いです。

亜鉛を多く含む食品は以下の通りです。

  • 牡蠣
  • ほたて
  • 豚レバー
  • 牛赤身肉
  • 枝豆
  • 納豆
  • チーズ

これらの食品を取り入れながら、バランスの良い食事をとることが大切です。食事で十分量の亜鉛が摂れない場合には、サプリメントを使ったり、医療機関で亜鉛を含む薬を処方する場合もあります。

「当帰芍薬散」などの漢方が処方されることもある

コロナ後遺症や、原因が特定できない味覚障害に対して、瘀血※(おけつ)に効果がある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が使われることがあります。当帰芍薬散は嗅覚障害に効果があるとされており、嗅覚障害が改善することで味覚障害が治ることもあるのです。

当帰芍薬散でコロナ後遺症の嗅覚障害や味覚障害が改善した例が報告されており、自然治癒に比べて、治療効果があるというデータもでています。

※瘀血とは、漢方治療の考え方で、神経などの組織が炎症を起こし、血流がとどこおる状態です。コロナ後遺症の味覚障害の原因は、味覚を伝える神経や神経周辺に炎症が起きることと考えられており、この炎症に関わると考えられます。

コロナ罹患後に味覚障害がある場合は病院を受診しよう

コロナ罹患後に食事が薄味に感じたり、全く味がわからなくなったりしている場合は、コロナ後遺症の味覚障害かもしれません。コロナ後遺症の味覚障害は神経細胞の障害が原因とされています。確立された治療法はまだ存在しませんが、60〜80%は2週間で自然に症状が改善すると報告されています。

亜鉛や漢方薬などで効果が出ることもありますが、効果には個人差があります。症状が長引く場合や別の原因が疑われる場合は、専門の医療機関で診察を受けましょう。

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この記事の監修者

山中 弘明のアバター 山中 弘明 よし耳鼻咽喉科 院長

【経歴】
・東京医科大学医学部 卒業
・東京医科大学八王子医療センター 初期研修修了
・日本大学板橋病院 勤務
・日本大学病院 勤務
・都立広尾病院 勤務
・よし耳鼻咽喉科 承継

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・身体障害者福祉法 第15条 指定医
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医

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