アレルギーは7種類に分類されることを知っていますか。症状が軽いものもありますが、適切に対応しないと命に危険が及ぶ場合もあります。避けるためには原因を知り、生活環境を整えることがとても重要です。
この記事では、それぞれのアレルギーの疾患例やその対処法、珍しいアレルギーについてわかりやすく解説します。
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侵入経路別のアレルギーは3種類
アレルギーは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が体に侵入することで生じる免疫反応です。侵入経路別だと以下の3種類に分類されます。
- 吸入性アレルギー
- 食物性アレルギー
- 接触性アレルギー
侵入経路が異なることから、症状にも違いがでる場合があります。
【花粉・カビ・ほこりなど】吸入性アレルギー
吸入性アレルギーは、空気中に拡散されているアレルゲンを吸い込むことで発症します。吸入アレルギーの主な原因は以下の通りです。
- 花粉
- カビ
- ほこり
その他にも室内環境に潜むダニやペットの毛、フケ、昆虫といったアレルゲンが原因となります。鼻粘膜や気道を介してこれらのアレルゲンが体内へ侵入し、喘息や鼻炎を引き起こすのです。
【卵・乳・小麦など】食物性アレルギー
食物性アレルギーは特定の食物が体内に入り、免疫機能が過剰にはたらくことで発症します。食物性アレルギーの原因となる食物は年齢によって変化しますが、主な食物は以下の通りです。
- 卵
- 乳
- 小麦
甲殻類や果物など、18歳以上で発症する可能性がある食品もあります。食物アレルギーは湿疹やかゆみなどの皮膚症状、腹痛や下痢などの消化器症状、喘息や呼吸困難などの呼吸器症状といったように、全身に様々な症状を引き起こします。
【金属・塗料・衣服など】接触性アレルギー
接触性アレルギーはアレルゲンが皮膚に直接触れることで赤みやかゆみ、湿疹といった皮膚症状を発症します。接触性アレルギーの主な原因は以下の通りです。
- アクセサリーなどの金属
- 毛染めやシャンプー、香水などの塗料
- ウールなど化学繊維で作られた衣服
接触性アレルギーの症状が出現するまでには時間がかかり、数時間〜2日後に発症することもあります。
食物アレルギーと接触性アレルギーの両方が関係するラテックスフルーツ症候群があります。ラテックスアレルギーを持つ方がラテックス製のゴム手袋などを使用すると、装着した部位に痒みや発赤、水泡といった症状を発症します。ラテックスアレルギーの方の約半数は、特定の果物や野菜を食べることで口の中の違和感や蕁麻疹、呼吸困難といった即時型アレルギー反応を生じます。これがラテックスフルーツ症候群です。
ラテックスアレルギーを持つ方はラテックスの使用を避けるだけではなく、バナナやアボカド、キウイフルーツ、トマトなどを摂取する際には注意が必要です。
反応別のアレルギーは4種類
アレルギーを侵入経路別ではなく、反応別に分けると以下の4種類に分類されます。
- Ⅰ型
- Ⅱ型
- Ⅲ型
- Ⅳ型
アレルギーとは、通常では害を及ぼさない物質に対し免疫機能が過剰に働き、症状が起こる反応です。免疫機能とは、細菌やウイルスなどから体を守ろうとする働きです。アレルギー反応において、体にとって害のある物質を「抗原(こうげん)」、抗原を除去しようと攻撃する物質を「抗体(こうたい)」といいます。
抗原と抗体がどのように反応するかによって、症状にも違いがあります。
Ⅰ型(即時型・アナフィラキシー型・IgE保存型)
Ⅰ型はIgE抗体と呼ばれるタンパク質が原因となるアレルギーです。IgEは免疫グロブリンというタンパク質の一種であり、体内の細胞と結合した状態でアレルゲンの侵入を待ちます。その後体内に侵入してきたアレルゲンがIgE抗体に結合すると、IgEと結合していた細胞からヒスタミンやセロトニンなどの物質が分泌されます。これらの物質によって炎症が起こり、体に痒みや発赤が生じるのです。
I型アレルギーの別名は以下の通りです。
- 即時型
- アナフィラキシー型
- IgE保存型
Ⅰ型アレルギーにはアレルギー性鼻炎や気管支喘息、花粉症、アナフィラキシーなどの疾患があります。
Ⅱ型(細胞障害型・細胞融解型)
Ⅱ型は抗体が自身の細胞と結びつき、誤って敵だと認識することによって起こるアレルギーです。Ⅱ型アレルギーの別名は以下の通りです。
- 細胞障害型
- 細胞融解型
自分の細胞を攻撃するため、赤血球や白血球、血小板といった血液成分が破壊されます。その結果、自己免疫性溶血性貧血やバセドウ病、重症筋無力症、血小板減少性紫斑病といった疾患を引き起こしやすくなります。
Ⅲ型(免疫複合症・アルサス症)
Ⅲ型は抗原と抗体が合わさった複合体となり、血流に乗って運ばれながら全身の組織を攻撃することで起きるアレルギーです。
Ⅲ型アレルギーの別名は以下の通りです。
- 免疫複合症
- アルサス病
Ⅲ型疾患の代表例として、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの疾患があります。
Ⅳ型(遅延型・細胞免疫型・ツベルクリン型)
Ⅳ型はT細胞と呼ばれるリンパ球が、炎症のきっかけとなるサイトカインを放出することによって起こるアレルギーです。T細胞は一度敵と認識した物質を記憶するため、再び同じ物質を見つけたときにはすぐに攻撃体制に入ります。他のアレルギー型とは異なり、抗体が関与しません。アレルゲンが体の中に入り込んで半日から数日ほど経って症状を発症するのもⅣ型アレルギーの特徴です。
Ⅳ型アレルギーの別名は以下の通りです。
- 遅延型
- 細胞免疫型
- ツベルクリン型
Ⅳ型には、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、臓器移植の拒絶反応などの疾患があります。
アレルギー疾患例と症状・対処法・治療法
アレルギー疾患の症状は皮膚や呼吸器といった一部の臓器だけでなく、全身状態にも影響を及ぼす可能性もあります。それぞれのアレルギー疾患に対して対処法や治療法について理解しましょう。
アレルギー性鼻炎(花粉症)
アレルギー性鼻炎には、スギやヒノキなどの花粉が飛ぶ時期のみ症状が起こる季節性アレルギー鼻炎と、ハウスダストなどが原因で季節を問わず症状がおこる通年性アレルギー鼻炎があります。
主な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりです。花粉症の鼻水は透明で水のようにさらっとしていることも特徴的です。
治療方法は、鼻水を抑えたり鼻づまりを軽減したりするために抗アレルギー剤やステロイド点鼻薬を使用します。日常生活の中では、体の中に花粉を入れないための工夫が大切です。外出するときにはマスクや帽子、サングラスなどを身に着けるようにしましょう。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚を乾燥から守る「バリア機能」が低下し、痒みと湿疹を繰り返す病気です。
治療にはステロイド薬や免疫抑制剤の塗り薬が使用されますが、日頃からスキンケアで肌の清潔を保つことが大切です。ダニやハウスダストだけでなく、ストレスや甘い物の食べすぎによる栄養の偏りも、痒みを引き起こす原因となりますので注意しましょう。
気管支ぜん息
気管支ぜん息とは、口から肺までの通り道である気道で炎症を起こし、狭くなっている状態の病気です。せきや痰(たん)、息切れのほかにも、ヒューヒュー・ゼーゼーと鳴る喘鳴といった症状が起こります。
治療には発作を起こしにくくする薬と発作を和らげる薬の2種類があり、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などを使用します。
アナフィラキシー
アナフィラキシーは、アレルゲンが体の中に入ることで皮膚(蕁麻疹やかゆみ)・呼吸器(呼吸困難)・消化器(腹痛や嘔吐)など様々な臓器に症状がみられる状態です。さらに血圧低下や意識障害をともない、重症化したものを「アナフィラキシーショック」といい、死に至る場合もあります。
緊急を要する場合はアドレナリン注射を使用し、状態が落ち着いたら抗アレルギー薬などを使用して治療します。アナフィラキシーは数分から数時間で急速に進行するため、早い対応がとても大切です。
アレルギー発症を引き起こす要素
アレルギーの発症には、体質・アレルゲン・環境因子の3つの要素が関係しています。同じアレルギー体質をもっている方々でも、アレルゲンや環境因子に触れた量によってアレルギーを発症する可能性は違います。単体の要因ではなく、3つの要素が重なることでアレルギー発症につながるのです。
「アレルギーコップ」の考え方
「アレルギーコップ」は、アレルギー許容量を超えるとアレルギー症状を発症するという考え方です。コップの大きさ以上に水を入れると溢れてしまう現象を、コップを人の体、水をアレルギー要因に置き換えたのです。
アレルギーの要因には、アレルゲンや食生活、ストレス、生活環境などがあり、体の中に蓄積されていきます。アレルギー要因が増えていくとコップである人の体が受け止められなくなり、アレルギーを発症するのです。
アレルギー体質の方は他の方よりコップの大きさが小さかったり、アレルギー要因が多かったりすることから症状を発症しやすくなります。
アレルギーを予防するためにも、生活習慣を整え、要因となるものを減らしていくことがとても大切です。
珍しいアレルギー3選
発症する可能性は低いですが、「寒さへのアレルギー」「水アレルギー」「運動アレルギー」といった珍しいアレルギーもあります。これらのアレルギーを発症した場合は、生活環境を整えて予防していくことが大切です。
寒さへのアレルギー
体温より低い温度のものに触れることで蕁麻疹や呼吸困難を引き起こすアレルギーです。蕁麻疹は全身に出たり冷えた部分のみに出たりと、個人によって症状の出方が異なります。
外出時にはマスクや帽子、手袋などを着用することで肌に寒さを感じさせないようにしましょう。
水アレルギー
水に触れることで皮膚に炎症が起こり、腫れたり湿疹が出たりするアレルギーです。自分の涙や唾液(だえき)に対しても反応することがあります。しかし、症状は体の表面の皮膚にだけおこるため、水を飲むことによって症状が出ることはありません。
症状を悪化させないためには、湯船につからずシャワーだけにしたり、汗をかかないように気をつけたりするといった細かい配慮が必要です。
運動アレルギー
運動をきっかけに喘息発作を発症するアレルギーです。アナフィラキシー症状を引き起こすこともあり、運動を始めて10分程度で発症する場合が多く見られます。
運動前に特定の食品を食べたときのみ発症したり、運動後に発症したりと発症の仕方に違いがみられることもあります。食物が関係している場合は、その食物は運動前に食べないようにしましょう。
アレルギー症状が出た場合は早めに医療機関へ
アレルギー症状は成長段階や時期によって自然に回復することもありますが、放っておくと命にかかわる可能性もあります。アレルギー科や皮膚科、内科、耳鼻咽喉科を受診することで、症状に対する治療やアレルゲンを特定する検査の実施が可能です。アレルギーかもしれないと感じた場合は早めに医療機関を受診しましょう。