ノイロトロピン注射とは、花粉症治療に使われる注射剤です。現在服用中の薬だけでは症状が改善しない方に、追加でおこなうこともできる治療方法です。この記事では、ノイロトロピン注射について具体的な効果や副作用、費用負担などをくわしく解説します。
花粉症治療に使われる「ノイロトロピン注射」とは
ノイロトロピン注射とは、ワクシニアウイルスを接種したウサギの炎症皮膚組織から取り出したエキスを有効成分とした注射剤です。
主な作用は以下の通りです。
- 下行性疼痛抑制系の活性化作用
- ブラジキニン遊離抑制作用
- 末しょう循環改善作用
- 冷感・異常知覚改善作用
- 抗アレルギー作用
上記のように、痛みを抑える作用や手足の循環を改善する作用もあり、整形外科では腰痛症や肩の痛み、神経痛などの治療に使用しています。鼻水を出しやすくする働きを抑えたり、アレルギー物質を分泌させる好酸球が増えるのを抑制したりする働きもあるため、花粉症などのアレルギー症状を緩和させる効果が期待できるのです。
ノイロトロピン注射は1日1回の注射が基本
ノイロトロピン注射薬の説明書には、「1日1回、ノイロトロピン単位として3.6単位(1管)を静脈内、筋肉内または皮下に注射する」となっています。年齢や症状に応じて1度に最大2管まで使用することもできます。毎日注射することも可能ですが、1週間に1〜3回の頻度で、1シーズンで合計6回程度注射するのが一般的です。
過敏症の方は注射を打つことができない
有効成分が身体に合わないと、発疹やアナフィラキシーショックなどの重大な過敏症状を起こしてしまう可能性があります。薬を製造する過程で鶏卵や牛の乳由来のカゼインペプトンを使用しているため、これらの食品にアレルギーがある方はとくに注意が必要です。いままで薬や食べ物で過敏症状が出たことがある方は、注射を打つ前に必ず医師に相談してください。
ノイロトロピン注射の花粉症への効果
ノイロトロピン注射は、花粉症の3大症状(鼻水・鼻づまり・くしゃみ)すべてに効果があります。とくにくしゃみに対して8割近い方が改善したというデータも出ています。
花粉などのアレルギー物質が鼻に入ると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症反応をおこす物質が、鼻粘膜中のムスカリン作動性アセチルコリン受容体を刺激して、アレルギー反応をおこします。
ノイロトロピン注射は鼻粘膜ムスカリン作動性アセチルコリン受容体が増えるのを抑えることでアレルギー症状を改善させるのです。
そのほかにも、炎症反応全般に関与している好酸球が全身にひろがるのを抑える働きもあります。ノイロトロピン注射は鼻の症状以外にも肌や目のかゆみ、じんましんなど全身のアレルギー症状に対して効果が期待できるのです。
ノイロトロピン注射には副作用もあるため注意が必要
過敏症状以外にも、眠気やほてり、気持ち悪さなどの副作用報告があります。注射剤のため、注射部位の腫れや赤み、かゆみなどが出る可能性もあります。
ただし副作用頻度は高くなく、命の危険があるようなひどい副作用の報告はありません。妊婦や授乳婦に関しては安全性を調べる検査をしていないため、原則として妊娠している方や授乳している方にはノイロトロピン注射をしていません。
ノイロトロピン注射を打つことのメリットとデメリット
ノイロトロピン注射のメリットは、他の抗アレルギー薬とは効き方が違うため、内服薬や点鼻薬、他の注射薬と併用して使うことが可能です。現在使用している薬だけでは症状を抑えきれない方や、眠気などの副作用が原因で抗ヒスタミン薬などが使えない方に有効です。
デメリットとして、効き目には個人差があるため効果を実感出来ない人もいます。製薬企業が出しているデータでは、約3割の方は効果を感じないという結果になっています。過度な期待には注意しましょう。
ノイロトロピン注射の費用は保険適用で1回500円~1,000円程度
ノイロトロピン注射は公的保険が適用されるため、ご自身の負担割合に応じた費用がかかります。3割負担だと初診で1,000円程度、再診で500円程度の費用負担です。
花粉症にお悩みの場合は耳鼻咽頭科を受診しよう
花粉症がひどくて悩んでいる方には、内服薬や点鼻薬に加えて、ノイロトロピン注射を追加でおこなうという選択肢があります。3割負担でも500〜1,000円程度で受けることができ、重大な副作用の報告がない治療薬です。よし耳鼻咽喉科ではノイロトロピン注射を実施しております。花粉症の症状がひどくて困っている方は、まずは一度ご相談に来てください。